東北大の研究チームがウクライナの医療やメンタルヘルスの状況を把握するため、ロシア侵攻後にウクライナ語で発信された約9850万件のツイートを分析した結果、医療需要や戦禍、メンタルヘルスに関するツイートは戦前より4倍以上に増加し、「糖尿病薬」など一部の言葉は40倍にも激増していることが判明した。研究チームは慢性疾患や心的外傷後ストレス反応(PTSR)を示す兆候がみられるとして、支援の必要性を訴えている。研究結果は22日、総合医学雑誌「The Tohoku Journal of Experimental Medicine」に掲載された。
東北大災害科学国際研究所の藤井進准教授らの研究チームは、ツイートが発信された時期を①「侵攻前」(2021年11月1日~22年2月23日)、②「急性期」(2月24日~3月23日)、③「亜急性期」(3月24日~6月15日)、④「慢性期」(6月16日~8月10日)-の4期に分類。
これら4期にウクライナ語で発信された約9850万件のツイートを分析したところ、侵攻後にツイート数は3倍、このうち医療やメンタルヘルスに関するものは約4・4倍に増加していた。
特に「治療」「症状」「処置」など医療カテゴリーが大幅に増加しており、ウクライナの人々が現地の医師や病院の被害を伝えたり、医療資源の情報を求めたりしている現状が浮き彫りになった。
このうち「糖尿病薬」という言葉を含んだものは、急性期には40倍以上に激増し、「採血」も同時期に11・92倍と急増していた。国際糖尿病連合アトラスによると、21年のウクライナにおけるⅡ型糖尿病患者は約235・5万人で、侵攻前から糖尿病の有病率が高かったことが指摘されている。
〝戦争弱者〟の「新生児」「子供」「高齢者」も侵攻前よりも増加。「出産」は、亜急性期に侵攻前の8・08倍に増えていることから、新生児や出産などの周産期医療への不安が高まり、医療機関もそれに追われている実態が推量される。
メンタルヘルスについては、侵攻直後に急上昇し、侵攻の長期化とともに再度増加しており、今後、実際に鬱病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)の発症が増加するかどうか、慎重に見極める必要があるという。
藤井准教授は「現地の状況が可視化されたことで、国際社会のウクライナ支援に関する重要なデータになることが期待される」と話している。