インドに魅せられ大学教授になった洋画家 絵筆に込めた日印国交70周年の絆

産経ニュース
高山博子さんと展示されている最近の作品「光明」=広島市
高山博子さんと展示されている最近の作品「光明」=広島市

日本とインドとの国交樹立70周年を記念する特別展「絵画で紡ぐインドと日本のきずな」が広島県立美術館(広島市中区)で開かれている。同展の実現には、インドでたくましく生きる女性の姿や子供たちの瞳の輝きに魅せられた1人の洋画家のインドに対する情熱があった。日印の絆を強めた洋画家は「画家としてこのような立派な展覧会を開いていただいたことはとても光栄です」と語る。

インドに魅せられる

長年にわたりインドにまつわる作品を制作してきたのは同市在住の洋画家、高山博子さん(64)だ。

大阪芸大を卒業した高山さんが初めてインドを訪れたのは昭和56年。大阪府河内長野市で中学の教員になった年のことだった。デリー、アグラ、ジャイナプール、ムンバイ(ボンベイ)などを巡る旅。当時のインドの田舎は発展途上で、日本とのあまりの違いに涙を流すこともあったが、旅を続けるうちに人々の目がとても美しいことに気付いた。深い祈りとともに悠久の大地で、自然と一緒に日々の営みをたくましく続ける女性の姿に魅せられた。

「悲しみや苦しみ、煩悩を抱えて人は生きている。文明がどんどん発展し、便利になってゆくなか、人間にとって命とは何なのか、深く考えるようになった」と高山さん。「生命の根源」をテーマに据え、作品を描き始めた。

大阪での教員生活は2年で終わり、広島に戻って結婚、2児の母に。子育てと画業の両立は大変で、幼い子供を背負って絵筆をとっていた。「若いころの作品は赤と金箔(きんぱく)を使ってとても情熱的。目は厳しいです。自分の子育てがあって母子像も描いています」と話す。描かれる女性像は自身に似ているという。

高山さんがインドを訪れた回数は20回を超えたが、どこへ行くにも、スケッチブックを手にしていた。人物、風景、ヒンズー教や仏教の聖地で巡り合う神々のレリーフを鉛筆で描き、水彩で色付けをする。これまでに描いたおびただしいスケッチには、そのときの感動がそのまま表現されている。高山さんは「スケッチしているときが一番楽しい。夢中になると手が勝手に動いてくれる」と話す。

大学で教鞭も

タゴール国際大学近くのサンタル村でスケッチをする高山博子さん(中央)=インド西ベンガル州、

2007年、「インドに恩返しをしたい」と考えていた高山さんは「何か運命の糸に導かれるような不思議な縁の連続で」、西ベンガル州にある国立ヴィシュヴァ・バーラティ大学にたどり着いた。この大学はノーベル文学賞を受賞した詩人で哲学者のラビンドラナート・タゴール(1861~1941年)が1901年に創設した青空学校から始まり、「タゴール国際大学」の通称で知られる。日本語学部もあるなど日本とのゆかりも深く、岡倉天心や横山大観をはじめ日本から多くの芸術家や哲学者が留学している。

高山さんは訪問教授としてこの大学で教鞭(きょうべん)をとることになった。最初の集中講義は2009年の2月で、大学側のリクエストは「日本の墨を使う授業」。「わび」「さび」の文化を伝えることになり、日本で和紙や筆などをそろえ、臨んだ。

慣れない英語での講義とあって不安もあったが、自己紹介を終えた瞬間に「なんとかなりそうと思った。芸術は言葉を凌駕(りょうが)した」と振り返る。同年8月に2度目の集中講義を行い、大学構内でスケッチ展を開いて好評を得た。現地で描いた数点を大学に残して帰国。同年、立正大学(東京)や比治山(ひじやま)大学(広島市)でこのときの体験を話す機会を得た。この業績が契機となり、タゴール生誕150周年で日印国交樹立60周年の2012年、記念事業として東京で開かれたシンポジウムでパネリストとして招かれることになった。

文化の栄えるところに本当の平和が

10年後の今年。日印国交樹立70周年にあわせ、在大阪・神戸インド総領事館から広島県に特別展の開催の申し出があった。高山さんは「本当に感謝でいっぱいです」と話す。

広島県立美術館で開かれた高山博子さんの講演会

12月10日、特別展の関連行事として県立美術館で開かれた高山さんの講演会には約170人が集まりほぼ満席に。高山さんはインドの女性を描くようになったきっかけや、時代で変遷する作品の特徴などを熱っぽく語った。

「文化の栄えるところに本当の平和がある。国際情勢が不安定な今の時代、東洋の思想が大切なのではないでしょうか。インドと日本は深い結びつきがある。会場で作品を見て、命を大切に、一瞬一瞬を愛と慈悲をもって生きようと思っていただければ幸いです」と高山さんは呼びかけ、「私も命をいただいたからには、魂のこもった作品を描き続けます。輝く未来になるように」と結んだ。

特別展は来年1月20日まで。入場は無料。(村上栄一)

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