食品会社やホテル経営などで財をなし、近年は慈善活動に力を入れている台北市の企業家、蔡衍栄さんは巨額の私財を投じ、自らの出身小学校の校舎を改修して、日本統治時代の建物を復活させたことが話題になっている。
蔡さんが卒業した台北市中心部の日新小学校は、日本統治時代に設立された由緒ある学校として知られている。蔡さんの長男も同校の卒業生だそうだ。
蔡さんは子供の頃、赤レンガ造りでアーチ形の回廊がある校舎をとても気に入っていた。近年、校舎が老朽化したため自ら台北市に寄付を申し出て、修復を主導した。旧校舎を取り壊して新しく校舎を作った方が格段に安いが、蔡さんは約3万7千枚に上る赤レンガを調達し、校舎をきれいに修復することを選んだ。
その後、温水プールと音楽ホールを備えた別の建物も、赤レンガなどを用いて建設し、同校に寄付した。一連の工事で総額10億円相当以上を費やしたという。
日本への留学経験がある蔡さんは「子供たちに、勉強しながら台湾の歴史を感じてもらいたい」と語る。
近年、台湾で歴史的な建造物を守ろうという風潮が広がりつつある。中でも日本統治時代の建物は、「懐かしさ」と工芸的な「美」を併せ持つとして、修復されるケースが増えている。(矢板明夫)