もうすぐクリスマス。キリスト教徒にとって最も大切な祝祭の日に向けて、ヨーロッパの主婦たちは11月からテーブルに飾るろうそくやクロス、食器を探し、食材の準備にいそしみます。クリスマス菓子の定番ブッシュ・ド・ノエルは、なじみのパティスリーに注文します。
昔はカレンダーも時計もなかったので、キリストの正確な誕生日は分かっていません。ただ、キリスト生誕は紀元前4~5年ごろとされ、誕生日を12月25日と定めたのは4世紀前半のローマ皇帝と伝わります。
以来、西欧ではクリスマスから1月6日の公現祭までを祝祭期間としています。正月にフランスを訪れた際にブッシュ・ド・ノエルがまだパティスリーに並べられていたのには、そんな歴史があったのです。
それではなぜ、ブッシュ・ド・ノエルがクリスマス菓子の代名詞となったのでしょう。
ブッシュは薪(まき)を意味します。冬の寒さが厳しいヨーロッパでは、暖をとる薪は生活になくてはならないものであり、薪をくべた暖炉は家族の幸せの象徴でした。そこで、家族の命を守る薪をかたどったお菓子が、一年で最も大切な日に出されるようになったそうです。祝祭のテーブルを彩るものだけに、繁栄を表すキノコの飾りも欠かせないものとなっています。