心筋再生だけでなく抗線維化作用も
心筋梗塞を起こして1カ月後の慢性心不全状態にあるモデルマウスに薬剤を投与して、心筋ダイレクトリプログラミングの効果を解析した結果、心臓線維芽細胞から直接誘導された心筋細胞が約2%認められた。2カ月後には心臓のポンプ機能が回復。細胞が壊死した範囲も約半分に縮小した。
さらに研究グループが「興味深い点」として注目したのが、心筋ダイレクトリプログラミング後のモデルマウスで線維化や炎症に関連する遺伝子の発現が低下していた点だ。
研究グループが解析した結果、心筋梗塞慢性期の心臓線維芽細胞では、線維組織の形成を誘導する「悪玉」線維芽細胞の集団が顕著に増加していることがわかった。しかし心筋ダイレクトリプログラミングを行った後は、悪玉線維芽細胞が線維化関連遺伝子の発現が低い「善玉」線維芽細胞の状態へと変化していたという。さらに、線維芽細胞が善玉化するメカニズムとして、心臓の線維化を引き起こす遺伝子の発現が抑制されることもわかった。
同研究グループは、「心筋ダイレクトリプログラミングは、心臓線維芽細胞からの心筋再生と抗線維化作用の両面から慢性期⼼筋梗塞の心不全を改善させることが分かった。今後、心筋ダイレクトリプログラミング効率の改善や遺伝子導入方法の開発などを検討し、臨床応用を目指して研究を進める」としている。(後藤恭子)