「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記

〝阪急タイガース〟が求めるのは常勝チーム、杉山-岡田体制はどんな「新しい景色」を

産経ニュース
阪神タイガースの次期オーナーに就任する阪急阪神HDの杉山健博社長(手前)と、角和夫代表取締役会長兼CEO
阪神タイガースの次期オーナーに就任する阪急阪神HDの杉山健博社長(手前)と、角和夫代表取締役会長兼CEO

〝阪急タイガース〟はブレずに優勝を目指してください。常勝チームにすることこそ熱烈ファンへの満点解答です。阪神の次期オーナーに阪急阪神ホールディングス(HD)代表取締役社長の杉山健博氏(64)が来年1月1日付で就任します。現オーナーの藤原崇起氏(70)は退任。2006年に経営統合した阪急出身者がオーナーに就任するのは初めてですが、背景にあるのは総帥・角和夫HD代表取締役会長グループCEO(73)の強い意向ですね。統合から16年、「お手並み拝見→大いなる疑問→我慢の限界→大ナタ決断」の流れこそ岡田彰布監督(65)の復帰であり、オーナー交代の人事だったでしょう。相当な覚悟を秘めた監督選定&オーナー人事の先にはチームの体質転換があり、「常勝」の二文字があるはずです。

次期オーナーは〝阪急の人〟

来季で球団創設88周年を迎えるタイガースの球団史が大きな転換期を迎えました。まさに「阪神タイガース」が「阪急タイガース」に変わる-。そう表現しても、あながち大げさではないような人事が来年1月1日付で断行されます。阪神の次期オーナーに阪急阪神HD社長の杉山健博氏が就任。チームの大改革に乗り出すのです。

杉山氏は1982年に阪急電鉄に入社し、2005年に取締役。阪神電気鉄道との統合でも手腕を発揮し、16年に阪急阪神HD副社長。17年4月から22年3月まで阪急電鉄社長。17年6月から阪急阪神HDの社長を務めています。阪神電鉄取締役を約6年間務めた時期もありますが、まさに〝阪急の人〟であり、阪急出身者のタイガース・オーナーの就任は球団史上初めてです。

今回のオーナー交代は衝撃的ではありますが、全く予想すらできなかったのか? と聞かれれば、そうではありません。矢野燿大(あきひろ)前監督が春季キャンプ直前の1月31日の全体ミーティングで「俺の中で今シーズン限りで退任しようと思っている」と電撃的に退任を表明して以来、阪神は次期監督問題を抱えてシーズンに突入。結果的に68勝71敗4分けの3位で終わり、17年連続で優勝を逃したわけですが、次期監督問題を取材する中で見えてきたのは阪急側の阪神に対するイライラや憤り、不満…という〝きな臭い〟空気でした。

村上ファンドによる阪神電鉄株の買い占めに端を発した騒動から、阪急HDが阪神電鉄の株式のTOB(株式公開買い付け)を行い、連結子会社化。06年10月1日付で阪急HDと阪神電鉄は経営統合し、阪急阪神HDが誕生しました。その時から阪急は阪神の100%株主です。

一方でプロ野球の世界ではオーナー会議で「新規参入にあたる」というパ・リーグ複数球団オーナーの指摘に対して、当時は阪急HD社長だった角氏が「タイガースは阪神電鉄のグループ会社の位置づけ。オーナーは阪神電鉄のまま」と強調。阪神の宮崎恒彰オーナーが巨人や広島などに根回したことが功を奏し、結果的に新規参入の30億円は手数料を除いて免除されましたね。そうした一連の経緯から統合後、阪急側は球団経営については直接的に口を出すことは控えていたように思います。過去にブレーブスを手放している〝負い目〟も存在していたのかもしれません。

総帥、角氏は現状に不満

しかし、次期監督問題を取材する過程で聞こえてきたのは阪急首脳、いや単刀直入に言うならば総帥・角和夫会長グループCEOの現状に対する大いなる不満です。キャンプ直前に矢野前監督が退任発言。しかも事前に阪神電鉄本社や球団首脳は承知をしていて、了解もしていた。キャンプ中には予祝とやらで監督の胴上げまで…。シーズンに入るとグラウンド上では本塁打を打った選手に〝首輪〟をつけて大ハシャギ、舞台裏では不可解な勧誘のような動きがあることもささやかれましたね。

さらに阪急側は次期監督候補として、かなり早い時期に「岡田彰布さんはどうなんですか?」と阪神側に聞いています。ところが、阪神側はそれを無視するかのように平田勝男2軍監督の昇格案を球団内で膨れ上がらせていました。17年も優勝から遠ざかっている現状に対する危機感の薄さや、チーム内で次々に起きる不可解な出来事などを重く見た阪急首脳はある時期にこう決断したと聞きます。

『このまま阪神に任せておけば、タイガースは一向に良くならない。もし30億円を支払え-と言うのなら支払ってでも球団を大改革しなければならない』

強い意志を固め、阪神側にチームの改革を迫る。場合によっては球団首脳をそっくり交代させる。新規参入扱いを球界から下されてもタイガースを抜本的に改革しなければ…という不退転の決意を固めたと聞きます。阪急側のこれまでとは全く違う雰囲気を知った阪神首脳は自分たちの立場の危うさも直感したのでしょうね。9月に入り、平田昇格案を引っ込めて岡田監督の15年ぶり復帰に大きくかじを切ったのです。

観客動員は№1も寂しい成績

手前ミソですが、9月27日付で岡田彰布新監督をスクープした経緯の中で痛感したのは阪急側の途方もない怒りです。なので後輩の記者に話していました。

「岡田新監督の就任発表の際、ひな壇の隣に阪急側の人がオーナーか球団社長として座っているかもしれんぞ」と…。

サッカーのワールドカップでよく耳にした言葉があります。「ベスト8入りして新しい景色を見よう」です。「お手並み拝見→大いなる疑問→我慢の限界→大ナタ決断」となった阪急首脳はHD社長の杉山健博氏をオーナーに据え、いよいよ年明けとともにチームの改革に乗り出します。キーワードは「新たな景色を見たい」でしょう。新たな景色とは何か…。タイガースを強化して「常勝」の二文字を手にすることです。

05年のリーグ優勝から17シーズンも優勝できていません。球団史をもっと長く見つめるならば、1950年の2リーグ分立から73シーズンでリーグ優勝した回数はわずか5回。日本一は85年のたった一度だけ。今や巨人を抜いて観客動員では12球団№1を誇るチームなのに、あまりにも寂しい成績です。

それでもファンは愛情を込めて熱心に応援し続けてくれます。近年では、いつの間にかファンの愛情に甘え、阪神全体が勝てなくても、善戦してくれたらいい…と目標値を下げているような気がしてなりませんでした。今回も岡田監督が15年ぶりに復帰した意味をどうも曖昧にしているような気がしてなりません。

『チームの近未来の世代交代のために、高校生からドラフトで入団した選手たちを育てていかなければならない。岡田監督には次にうまくつないでほしい』という声が聞こえてきます。

確かに高校生出身の選手たちを育てることは、戦力のボトムアップにつながり、強化策として否定はしません。しかし、ファン目線ではどうでしょう。2005年優勝監督の岡田監督だからこそ来季は優勝-と期待するファンが圧倒的だし、少なくとも岡田監督を推薦した阪急側の一番の狙いは「勝てる監督」だったはずです。

阪急阪神HDのエンタテインメント事業に位置するタイガースはもっと頻繁に優勝を果たし、関西経済界に波及効果をもたらし、他のグループ事業にも好影響を及ぼす-。角会長グループCEOは目標達成のためには新体制に妥協を許さないはずです。スピード感あふれるオーナー交代がその決意を表しています。杉山-岡田体制はこれまでの阪神タイガースとは全く違う道を歩むでしょう。期待しかありませんね。一刻も早く勝って、ファンの留飲を下げてください。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。

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