4日に投開票された東京都品川区長選は、全国の自治体の首長選で7例目となる異例の再選挙で決まった。ただ、同区では約2カ月間のトップ不在が続き、再選挙でも1回目の選挙(10月2日投開票)と同数の6人が立候補したことで、史上初の再々選挙の可能性が浮上した。繰り返される選挙によるさらなる行政の停滞か…。そうした事態を回避する一案として、戦後の一時期実施された決選投票制度が注目される。(末崎慎太郎)
再々選挙が現実味
「首長の不在が続いてしまった。国で検討することだが、再選挙の制度には大きな課題がある」
4日深夜、再選挙で当選を決めた森沢恭子氏(44)は、こう述べた。
今回の品川区長選は、1回目に過去最多の6人が立候補。再選挙もこの6人中5人が立候補し、新たに1人が加わったことで再び最多の6人となった。候補者乱立の構図は変わらず、再々選挙の可能性が現実味を帯びた。
総務省によると、首長選で再々選挙となった例はない。再選挙は今回の品川区を含め、札幌市(平成15年)や千葉県市川市(29年)など、7つの自治体で行われている。
公職選挙法は、首長選の場合、有効投票総数の4分の1以上の得票数(法定得票数)を、当選に必要な最低限のラインに定める。極端に少ない得票の候補者では、有権者全体の代表としてふさわしくないとみなされるためだ。
いずれかの候補者が法定得票数に達するまで、選挙は何度でも繰り返される。やり直しの選挙は新たに一から執り行われるため、再び同じ顔触れになったり、候補者が増えたりすることも考えられる。
首長不在2カ月
そこで問題となるのが、当選人が決まるまでの間、首長の空席が続くことによる行政の停滞だ。
公選法には、選挙のやり直しが決まると、次の選挙は2週間の異議申し出期間をへた後、50日以内に実施するとある。約2カ月間、首長不在の期間が生じることになる。その間は「副知事または副市町村長がその職務を代理する」(地方自治法)。この規定は特別区にも適用され、当面の行政運営が保たれる。
ただ、行政実務の慣例では、予算編成や議会の解散、幹部職員の人事など、重要事項については選挙で選ばれた首長でないとなし得ないとされる。品川区でも来年度予算案の策定スケジュールに乱れが生じた。
選挙の執行経費も無視できない。品川区長選の再選挙でも、追加で約1億8千万円の費用が使われた。
「決選投票検討を」
こうした問題点に対し、選挙制度に詳しい東洋大の加藤秀治郎名誉教授(政治学)は「今後も再々選挙はないだろうという希望的観測に依拠した制度は見直すべきだ」と話す。
1回目の品川区長選のように浮動票が多い都心部では候補者が乱立すると票が分散し、地方でも有力候補者間で票が割れたまま固定化することが予想される。「再々選挙は日本全体で起こり得る」という。
また再選挙に当たっては、事前の候補者調整がなされるケースもあり「有権者の目が届かないところでの政治の取引は不透明だ」と指摘する。
そこで代替案として上がるのが、終戦直後の昭和21年から27年まで実施された決選投票制度だ。この制度では、最初の選挙で有効投票総数の8分の3以上にだれも届かなかった場合、「当選人なし」の告示から15日以内に上位2人による決選投票を行う仕組みだった。
15年前、宮城県加美町長選の再選挙があった際に、総務省の有識者研究会で決選投票制度が検討されたが、再選挙で決まらないのは極めてまれだとして、議論は棚上げされた。
加藤教授は「首長不在の長期化が望ましくないのは明白だ。前例があるのだから、決選投票の導入についてもっと具体的な検討がなされてもよいのではないか」と指摘している。
