ビジネスの効率化を後押しするクラウドコンピューティングサービスの費用抑制や活用促進を実現するサービスを手がける日本企業「アイディーエス」(東京都港区)が活躍の場を広げている。アイディーエスはアマゾンの子会社でクラウドサービス大手のアマゾンウェブサービス(AWS)の正規代理店として、企業とAWSの支払い契約を仲介する事業を展開。その実力をAWSから評価され、正規料金より5%安値での契約締結を認められている存在だ。またクラウド上の情報を厳重に扱う安心度の高いサービスは顧客企業にも好評で、着実に存在感が高まってきた。近年はシステム開発事業でベトナム進出も成し遂げ、世界を視野に入れたサービス戦略が動き出している。
コスト適正化で注目集める
「新型コロナウイルス感染防止対策でテレワークができる環境が求められる時代に、AWSの仮想デスクトップサービス『Amazon Workspaces』の導入支援でお客様のご要望に応えられました。オフィスにあるパソコンと同じように仕事ができることはもちろん、サイバー攻撃のリスクにさらされる社外の端末ではなくネットワーク上に重要なデータを保存することでセキュリティーを強化したいというニーズにもマッチしたのだと思います」
アイディーエスでAWS関連サービス「Sunny Cloud(サニークラウド)」を統括するサニービュー事業部の小寺加奈子事業部長はこう話す。
AWSのクラウドサービスは、Amazon Workspacesのほか、データを保存する汎用(はんよう)クラウドストレージ「Amazon S3」、仮想サーバーの「Amazon EC2」などが代表的。テレワーク需要に対応できるだけでなく、サーバーなどを自社内に設置して管理する運用方法「オンプレミス」と比べて、導入のための初期費用やメンテナンスのコストを省ける強みもある。
こうした中でアイディーエスの事業が注目を集めるのは、AWSのコスト削減効果をさらにパワーアップできる効果があるからだ。アイディーエスが展開する請求代行サービス「サニーペイ」を経由してAWSと契約すると、直接契約した場合と比べて利用料金を5%抑えられるメリットがあるという。
小寺氏は契約の仕組みについて、「お客様の代わりに弊社がAWS社に利用料金を支払い、正規よりも安い料金を日本円でお客様にご請求させていただく形になります」と説明。AWSは認定資格者の数や実績を基準にしてパートナー企業をランク分けしているが、アイディーエスは最上位に次ぐ「アドバンストティア」に位置するため、こうしたディスカウントが可能になるのだという。
円高・円安の影響で利用料金自体は変動するが、サニーペイを通して支払う額は正規料金より安くなる。また、すでにAWSと直接契約している企業がアイディーエス経由の契約に乗り換える場合でも、簡単な手続きをするだけで割引料金が適用される。
コスト面以外でもアイディーエスの存在感は大きい。AWSが提供するサービスの種類は11月時点で200超。企業が自社の課題を解決するために最適なサービスを選ぶのは簡単ではなく、アイディーエスのような専門家は頼りになる存在だ。また、セキュリティー障害等があったときには保険を利用できたり、専門家からアドバイスを受けられたりする特典を用意して、万が一の事態のフォローに努めている。
自社で保持したい「ルートユーザー」権限
アイディーエスのサービスを特徴づけているのはコスト最適化だけではない。「請求情報以外、お客様のデータを見ない」(小寺氏)という点も、顧客企業に安心感を与えるポイントだ。
小寺氏によると多くのAWS代理店が行っている請求代行サービスでは、利用者のアカウントを代理店が保有し、強力な権限を持つ「ルートユーザー」として管理している。AWS代理店にとっては、顧客管理がしやすくなるなどの利点がある取り決めだが、顧客企業が自社のすべてのシステムに対してアクセスできる“鍵”を社外の第三者に渡すことは企業にとって深刻な問題になりかねないという。
その点、アイディーエスは企業が保有するAWSアカウントやルートユーザーの権限を一切保有しない。仕組み上、利用者の重要情報にアクセスできないのだ。「顧客企業に『当たり前』の安全を提供している数少ないAWS代理店」(同社)だとしている。
システム開発、ベトナムの子会社でも
一方、AWSと企業の橋渡し役としてビジネスの効率化に貢献してきたアイディーエスには、システム開発や運用を請け負うシステムインテグレーター(SIer、エスアイヤー)としての顔もある。「SIerとしては20年以上の歴史があります。AWS上のアプリケーションの開発もできるパートナーとしてお客様に選んでいただくパターンは少なくありません」(小寺氏)。
クラウドを利用するための契約と、そのクラウドを最大限活用するためのシステム作りをワンストップで依頼できるのが強みというわけだ。中でも、社内の業務アプリケーションを「スクラッチから(ゼロから)」開発した実績が多いという。
アイディーエスはSIer人材の確保を狙い、2017年にベトナム・ホーチミンに子会社を設立。国内のIT人材不足の問題にオフショア開発の体制の強化で対応した。現地の社員はすでに約50人まで増え、今後はベトナムをはじめとしたアジア地域の顧客を対象にSIer事業とAWS代理店事業を展開したい考えだ。
アイディーエスが後押しするビジネスのクラウド化は、日本でも目立ってきたコロナ禍前の経済活動を取り戻す動きにもフィットしている。経済産業省がコロナ禍で打撃を受けた中小企業向けに業態の転換を支援する「事業再構築補助金」はクラウド利用にも充てることが昨年3月の第1回から公募中の第8回まで公募要領で認められているといい、小寺氏は「予算をかけられないスモールビジネスでクラウドを利用すると、初期費用や従量課金の使用料などが補助の対象となります」と中小とクラウドの相性の良さを語る。
クラウドは社会にすでに浸透したとも思われがちだが、本当の強みについては理解が進んでいないというのが小寺氏の見方だ。アイディーエスが仲介した企業の場合、AWSが提供するサービスの中でもオンプレミスをクラウドに置き換えるものに人気が集中しているのが現状。本来、さまざまな種類のサービスを組み合わせてビジネスの効果を最大化する、というのが“クラウド時代”にふさわしい活用法だという。
「皆様がクラウドを使えるようになるまで伴走するパートナーでありたい。われわれも日々リリースされる新しいAWSのサービスや技術の獲得を継続することでお客様に貢献し、海外展開にも力を入れたいと考えています」。小寺氏は顧客となる企業と良い影響を与えあい、共に発展していく自他共栄の未来を描いている。
(提供 株式会社アイディーエス)