中国からベトナムに入国し、モンカイ、カムファを抜け、ハロンという街にやってきた。この街の沿岸には「ハロン湾」というカルスト地形が広がっており、世界遺産にも登録されている。海面から無数の巨大な奇岩が顔を出し、その特殊な景観からかつては海賊の隠れ家にもなっていた。
似たような場所にこちらも世界遺産に登録されている中国の桂林がある。ドラゴンボールのパオス山そのままの見た目で、非常に冒険心をくすぐる風景である。
桂林とハロン湾を比べてしまうとどうしても後者のほうが魅力に欠けているのが正直なところだ。いまだに海賊が隠れているというのなら海だって潜りたいところだが、ベトナム人観光客であふれかえる沿岸を見るとそういうわけでもなさそうだ。私は沿岸を自転車で走りながら世界遺産を遠目に冷やかし、まっすぐ街の中心地へと向かった。
中心地でもやはりハロン湾の誘いが満載だった。ツアーをあっせんする旅行会社が何軒も並び、「ハロン? ハロン?」と声をかけてくる。そんな誘い方ではより一層、世界遺産の魅力が落ちてしまう。
旅行会社の中年女性を適当にスルーしていると、バイクに乗った1人のおじさんの声に私は足を止めてしまった。「オレならおっぱいの大きな美女のところまでおまえを5分で連れて行ける」と言う。東南アジアの都市ではこんな誘いは腐るほどあるわけだが、「ハロン湾で」というポイントに気を引かれた。