原子力発電所の運転期間が60年を超えた場合のルールについて、原子力規制委員会は16日、先に示した運転開始後30年以降は最長10年ごとに設備の劣化評価を義務付け、延長認可を繰り返す新たな制度案を概ね了承した。原発の運転期間は法律で原則40年、最長60年と定められているが、上限撤廃を目指す政府方針を踏まえ制度を見直した。日本でも60年超運転が可能になる。
規制委は近く電力事業者から意見を聴き、年内に運転期間の上限を定めた原子炉等規制法の改正案をまとめる。一方、経済産業省は、規制委の再稼働審査で運転停止した期間を除外し、実質的に60年超の運転が可能になる案を軸に検討を進めており、運転延長をめぐる議論は年内に決着する見通しだ。
現行の「40年ルール」は、運転開始から40年が経過する前に原発設備の劣化などのハード面を調べ、規制委が認めれば1回に限り最長20年の運転延長ができる。また、これとは別に運転開始から30年目以降は10年ごとに事業者の管理状況や運用方針などのソフト面を確認する制度がある。
新たな制度案では、この2つのルールを一本化し、30年を起点に最長10年ごとにハード面とソフト面の両方を審査。運転停止期間の除外は認めず、劣化の状況次第では前の審査から10年が経っていなくても審査する。ただ、いずれの審査も国の新規制基準に合格した原発が対象で、既に40年超の延長が認められた原発や、運転延長を申請中の原発については今後、経過措置も検討する。
資源エネルギー庁によると、米国では原発の運転期間が原則40年と定められているが、規制当局の安全審査をクリアすれば20年の延長が可能で、何度でも申請できる。現在運転中の92基のうち50基が40年を超えており、既に80年超の延長認可を取得した原発も6基ある。また、英国とフランスは運転期間に上限はない。