ロシア軍がウクライナ南部の要衝ヘルソンから撤退したことで、ロシア国内で強硬派を中心にプーチン大統領を公に批判する声が出始めた。ウクライナで敗色が強まるなか、タブーだったプーチン批判が噴出したことで、国内の権力闘争が激化する可能性もある。
プーチン氏を公然と批判したのはロシアの民族主義的思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏。「プーチンの盟友」「プーチンの頭脳」と呼ばれ、ウクライナ侵攻などプーチン氏の領土的野心に影響を与えたともいわれる。娘のダリア氏は8月、モスクワ郊外で車の爆発により死亡した。
そのドゥーギン氏はプーチン氏を「独裁者」と称し、ヘルソンを維持することに失敗し「ロシアの都市を守れなかった」と批判した。
英国の人類学者フレイザーの著書を引用し、干魃(かんばつ)の中、雨を降らせることができなかったために殺害された「雨の王」の例を提示。独裁者は身をていして国家を救うか、「雨の王」と同じ運命をたどるかだと指摘した。ウクライナ侵攻に失敗すれば、殺害など重い責任が待ち受けていると示唆した形だ。
米シンクタンク、戦争研究所は、ロシア国内の侵攻推進派がプーチン氏の戦争遂行能力に疑念を抱き始めていると分析。プーチン氏への直接的な批判が「前例がないほど(高まっている)」と指摘した。