日韓両政府は今月中旬に東南アジアで行われる国際会議に合わせて調整中の首脳会談で、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向けて連携を確認する方向で検討に入った。日韓首脳がFOIPで連携を打ち出すのは初めて。インド太平洋地域での一方的な現状変更の動きを念頭に、北朝鮮に対する連携を超えた日韓協力の深化を目指す。複数の政府関係者が8日、明らかにした。
FOIPをめぐっては、米韓首脳は足並みをそろえてきた。一方、日韓両国は文在寅(ムンジェイン)政権時代に自衛隊機へのレーダー照射問題などで関係は「戦後最悪」と呼ばれるほど悪化。日本提唱のFOIPは首脳や外相間で取り上げてこなかった。
ただ、今年5月に米国や日本との関係を重視する尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が誕生。日米韓による対潜水艦作戦の共同訓練を約5年半ぶりに実施し、日本で開かれた観艦式に韓国海軍が7年ぶりに参加するなど、関係改善の兆しが見えてきている。
こうした状況を踏まえ、岸田文雄首相は尹氏との会談で、FOIPを日韓共通の目標として共有する。ミサイル発射を繰り返す北朝鮮への対処で連携するだけにとどまらず、中国を念頭に法の支配に基づく国際秩序の構築や、台湾海峡の平和と安定の重要性を確認したい考えだ。
一方、会談でいわゆる徴用工訴訟問題が進展するかは見通せない。韓国側が解決策を示せるかは微妙な情勢のため、今月の尹氏との会談は「短時間の会談」と位置付ける方向で調整している。