自民、公明両党は9日、国家安全保障戦略など「安保3文書」の改定に向けた実務者によるワーキングチーム(WT)の会合を開き、サイバー防衛について意見を交わす。焦点となるのが攻撃の兆候の探知などを行う「アクティブ・サイバー・ディフェンス(積極的サイバー防御)」の範囲だ。相手のシステムやネットワークへの侵入などまで念頭に置く自民に対し、公明が歯止めをかける構図となる。
ロシアによるウクライナ侵攻では、サイバー攻撃への対処の重要性が浮き彫りになった。政府はサイバー分野の人材確保や組織強化を急いでおり、自公とも理解を示す。
一方、積極的サイバー防御をめぐっては温度差がある。新しい概念で国際的にも定まった定義はなく、不正アクセスの監視や妨害を指す場合もあれば、相手システムへの侵入やハッキングを行い、データや制御機器を破壊する行為などを含むこともある。
自民議員は「攻撃者を特定して公表できる制度に加え、場合によってはシステムに入り込んで対処できる能力も必要だ」と語る。こうした行為を可能にするためには不正アクセス禁止法などの改正が必要となる。
これに対し公明側は「自民の考えはディフェンスではなくオフェンス(攻撃)だ」(中堅)と慎重だ。党幹部も「サイバー攻撃の手段は無数にある。とても潰しきれない」と指摘。昨年の東京五輪・パラリンピック期間中に4億5千万回以上のサイバー攻撃があったが全て防いだ事例を挙げ「こうしたことを徹底する方が現実的だ」と主張する。(石鍋圭)