乳がん経験者が抱える再発への恐怖をスマートフォンアプリを使った心理面からの支援で和らげることができたと、名古屋市立大学などの研究チームが発表した。乳がんは40代後半が好発年齢で、患者は仕事や育児の負担と治療の両立を迫られるケースも多い。こうした中での不安や抑うつは患者にとって大きな苦しみだが、時間的な制約などで十分なケアが受けられないという問題もある。今回、患者に対するスマホを通じた精神的なサポートの効果が確認されたことで、新たな支援の可能性が示された格好だ。
働き・子育て世代の女性を襲う再発の恐怖
毎年9万人以上が罹患する乳がん。患者数は年々増加傾向にあるが治癒率は改善しており、「ステージ1」(しこりの大きさ2センチ以下、リンパ節転移なし)の患者の場合、10年後の生存率は90%以上とされている。ただ、再発した場合は完治が難しく、多くの患者が治療後も再発に対する不安や恐怖を抱えているケースが多い。
特に好発年齢である40台後半の女性は仕事や育児など社会的な負担も大きいため、乳がんになった場合は心理的な苦境に立たされやすい。この世代の乳がん経験者が積極的な介入を要するほどの不安や抑うつを発症するケースは、手術後1~2年以内の患者では1~3割、再発後の患者では4~5割程度にのぼるという研究結果もある。
こうした中、再発への恐怖を和らげる手段として、心理療法の一つである認知行動療法の有効性が注目されている。しかし専門的な治療を提供できる医療者の不足や、仕事や子育てなどで忙しい患者側の時間的な余裕のなさといった事情もあり、ほとんどの患者が適切な治療を受けられていないのが実情だ。