朝晴れエッセー

一円玉・10月31日

産経ニュース

先日、セルフレジから出てきたお釣りの中に古びた一円玉を見つけた。それは鈍い鉛色で、アルミニウムの輝きなど捨ててしまったかのようだった。

私は昭和38年の生まれで、同年代の硬貨を見つけると妙に懐かしく、ガラス瓶に入れて集めている。帰宅して確かめてみると「昭和三十年」とあったので、早速「貨幣カタログ」を繰ってみた。すると、現行の一円玉では一番古い発行年で、年齢でいえば67歳だ。私の小学生時代は物価も安く、祭りの屋台のくじ引きが10円だった。その10円を親にせがむことができず、1円といえども私には大きな存在であった。

時代が昭和から平成に移るとバブル景気は崩壊。「一円玉の旅がらす」という曲がNHKの「みんなのうた」で流れ、スーツのネクタイを解いたサラリーマンがスナックで歌う光景をよく見かけた。そして令和の今、一円玉の製造はコレクター向けのミントセットだけである。

この一円玉は、来年還暦を迎える私よりも随分と先輩だ。その間、どんな旅路を重ねてきたのであろう。ひとりぼっちだったのだろうか。それとも冷たいサイフの中で大きな十円玉や百円玉とおしくらまんじゅうをしながら、肩身の狭い思いをしてきたのであろうか。いやきっと消費税の導入で、毎日お釣りの支払いに大活躍していたに違いない。

「長い間、お疲れ様」とねぎらいながら、同年代の仲間がいるガラス瓶に入れると「チン」と小さな音が鳴った。瓶の中をのぞくと若木の模様がくっきりと見えた。


上田龍男(59) 奈良県橿原市

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