【パース(豪西部)=永原慎吾】岸田文雄首相は21日午後(日本時間同)、オーストラリア西部のパースに政府専用機で到着した。就任後初のオーストラリア訪問で、22日にアルバニージー首相と3回目の対面の首脳会談に臨む。インド太平洋地域で軍事的な影響力を増す中国を念頭に、新たな安全保障共同宣言を発表する予定だ。資源・エネルギー分野での協力も確認し、「準同盟国」と位置付ける豪州との関係をさらに高い次元に引き上げたい考え。
首相は出発前、羽田空港で記者団に、首脳会談について「日豪関係の強力な絆をさらに深化させる機会としたい」と語った。防衛協力、「自由で開かれたインド太平洋」、資源・エネルギー問題の3つを主要テーマに挙げた。
新たな安保共同宣言に向けては「今後の協力の推進について方向性を議論する」と述べた。新たな宣言には、中国の台頭を踏まえた防衛や経済安保に関する記述を盛り込む方向だ。現行の宣言は平成19(2007)年に締結した。当時、豪州は中国を貿易相手国として重視しており、中国の脅威への言及はなかった。
だが、近年は中国が南太平洋にまで進出している。今年4月、豪州沿岸から2千キロ以内のソロモン諸島と安保協定を結び、中国による軍事拠点化が懸念されている。豪州にとって中国は直接的な脅威となりつつある。日豪は環境の変化を踏まえ、自衛隊と豪軍が共同訓練などで相互訪問する際の手続きを簡素化する円滑化協定を1月に締結するなど、段階的に連携のレベルを引き上げてきた。
ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、豪州からの資源・エネルギーの安定供給確保も重要なテーマとなる。パース周辺は日本が輸入の4割を豪州に依存する液化天然ガス(LNG)や鉄鉱石の産地。