英語学習に特化したアプリの利用が増えている。場所に制約がなく好きなときに学べるなど、利便性が高いからだ。アプリを提供するのは、先端ITを活用して教育を支援する「EdTech(エドテック)」と呼ばれる分野のスタートアップ(新興企業)で、習熟度に応じて最適問題を出したり、楽しんで学習する工夫を凝らしたりして顧客獲得を図る。
AIが最適問題を推薦
「信用ある教材が集まるので、利用者も増える」
人工知能(AI)を活用した英語教材を提供するGlobee(グロービー、東京都港区)の幾嶋研三郎代表取締役は胸を張る。
開発したアプリ「abceed(エービーシード)」の利用者は9月末で270万人を突破した。1年前に比べ約70万人増えた。英語検定試験「TOEIC」対応など600冊以上の人気教材を掲載し、この中からAIが個人の英語能力に応じた最適問題を推薦する。また発音をその場で採点するため、最短で効率よく学習できると評価された。
TOEIC受験などを目指す個人を主なターゲットに平成28年5月にアプリ提供を開始。有料会員は今年1月に5万人に達し、月間売上高が1億円に達した。続いて令和2年2月から企業向け、3年4月から学校向けを始めた。
最近ではグローバル人材の育成に注力する企業の利用が増えており、200社ほどが採用。来年5月末までに300社を目指す。このため今春に法人営業責任者を配置した。
GIGAスクール構想に対応
これまでは学習効率を最大化できるという教材に注目した企業からの問い合わせを受注につなげてきた。また研修会社や営業代理店を活用して顧客を獲得してきたが、今後は営業要員を増やし組織的に対応。3~5年後に導入企業を1000社規模に増やす考えだ。
学校向けも来年5月末までに導入校を現状より2倍強増やす。学校現場では小中学生1人に1台の情報端末を配る「GIGAスクール」構想への対応から、AIを活用した個別最適化学習を推進する動きが進む。これに伴いabceed導入機運が高まっており、営業に力を入れる。
幾嶋氏は「12年までに英語領域をトータルでカバーし、英語教育企業でナンバーワンを目指す」と強気だ。
勉強するとキャラが褒めてくれる
国も補助金を用意し学校へのエドテック導入を後押しする。これを好機と捉えたのが、ダウンロード数が650万を超える英語アプリ「mikan」を提供するmikan(ミカン、同渋谷区)だ。
教育機関がICT(情報通信技術)を活用したサービスを導入しやすくするため費用の一部を補助する経済産業省の「EdTech導入補助金」の事業者に今年5月採択されたことを追い風に、mikanを売り込む。
導入したのは、補助金を利用していない学校も含め50校を超えた。高岡和正代表取締役は「英語学習の効率アップにつながるので進学校だけでなく、幅広い学校に使ってほしい」と導入を呼びかける。
このため、英語の習熟度に合わせた個別最適化学習に加え、楽しさも用意。ミカンのキャラクターが登場し勉強すると褒めてくれたりするので、モチベーションの向上にもつながると人気だ。
平成31年3月の設立時は個人向けでサービスを開始し、今年4月に学校向けを加えた。法人(学習塾)向けも準備中で、中学生から大人まで英語学習に寄り添っていく。(松岡健夫)
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EdTech(エドテック) Education(教育)とTechnology(技術)を組み合わせた造語。ITを用いて教育を支援する仕組みやサービスのことを指す。学習・授業支援システムからインターネット上で英会話やプログラミングなどを学習できるサービスまで幅広い。広義ではeラーニングも含まれるが、習熟度に合わせたきめ細かなサービスを提供できるなど、より高度化している。