東芝の経営再建を巡り、同社が国内投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)を中核とする企業連合に優先交渉権を与えたことが12日、分かった。JIPの連合は日本企業が中心で、中部電力やオリックスなどが出資を要請されている。JIPは株式を非公開化した上での再建を目指しているが、2兆円を超える巨額の買収資金を調達できるかどうかが焦点となりそうだ。
関係者によると、JIPは東芝との関係が深い日本企業を中心に、20社程度で企業連合を組む考え。中部電やオリックス以外にも、JR東海や東レ、日本生命保険が東芝再建に向け出資するよう要請されているとみられる。
JIPは当初、官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)と連合を組んでいた。しかし、非公開化後の経営を巡る考え方が違ったため解消。現在は再建案に当たる意向表明書を別々に出している。
JICは米投資ファンドのベインキャピタルと連携する考え。東芝再建では、ほかにも英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズが名乗りを上げているが、JIPとJICの2陣営に絞り込まれたとの見方が強まっている。
東芝の直近の株式時価総額は約2兆2千億円。JIPの連合が提案を実現するには、それ以上の買収資金が必要になるとみられる。JIPでは約2兆2千億円のうち、約1兆円を陣営に参画する企業の出資、残り約1兆2千億円は金融機関からの借り入れで賄うことを想定しているもようだ。
一方、JIPに与えられた優先交渉権は独占交渉権と異なり、他陣営も並行して交渉できる。東芝ではJIPの提案を評価する一方で、「現時点ではどの候補とも合意に達することを確約するものではない」としており、JICなどにも詳細な提案を求めていく考えだ。
東芝は4月に再建パートナーの選定を開始。7月下旬に始まった2次入札で、当初の10陣営からJIPなどの4陣営へ絞り込んだ。今後は数カ月をかけて、再建案の精査や最終的なパートナー選定に取り組む方針だ。(井田通人)