新型コロナウイルスを巡る水際対策が11日、大幅に緩和された。訪日外国人客の消費に関連した業界では、日本での買い物が割安になる円安という追い風が吹く中、訪日客需要の活性化に期待が膨らむ。一方、コロナ禍前は訪日客の約3割を占めていた最大市場の中国では、当局が「ゼロコロナ政策」を堅持して海外との往来を厳しく規制しているため、訪日客需要の回復の勢いは当面限られるとの見方もある。
「組織横断で、急ピッチで受け入れ態勢の準備をしている」。大手百貨店の三越伊勢丹が運営する伊勢丹新宿本店(東京都新宿区)の栗原憲二本店長は11日の説明会でこう述べた。同店では11月下旬にかけて免税カウンターの拡充を図る。
一方、コロナ禍前に「爆買い」で知られた中国人客を巡っては、中国政府がゼロコロナ政策を堅持し、本格回復は当面見通せない。今回の水際対策緩和について、ある大手百貨店の担当者は「(訪日客の消費回復への)期待はあるが、コロナ禍前に一気に戻るという状況にはならず、(追い風は)限定的ではないか」と慎重な見方だ。
このため百貨店各社は、中国以外からの訪日客の獲得も強化。高島屋はコロナ禍前に、免税売り上げの約8割を中国人客が占めていた。今回の水際対策緩和に際して同社は、欧米や東南アジアなどからの訪日客の誘客に向け、一部店舗で地図サービス「グーグルマップ」を活用した英語での情報発信を進めている。
一方、外食業界からも、今回の水際対策緩和に期待する声が上がる。外食大手コロワイドは、訪日客の間でさまざまな料理を楽しめる居酒屋の人気が高いことを踏まえ、旅行会社に訪日客向けの食事プランを提案。入国者数の上限撤廃が発表されて以降、続々と受注が決まった。居酒屋に加え、焼き肉チェーンなどでもツアー客を受け入れる。
大手航空会社にとってもコロナ禍で課題だった国際線の旅客数の復調につながる。ANAホールディングスの芝田浩二社長は「日本にとって大きな転機。国際線は水際規制がほぼ緩和されたことで予約が増えており、運航規模を(コロナ禍前の水準に)復元していく」などとコメントした。(森田晶宏、福田涼太郎、飯嶋彩希)