「地域づくり組合」移住後押し 人口減の農村、切り札は「複業」

産経ニュース
「地域づくり組合」の制度を使って沖縄県から北海道へ移住した稲嶺盛玄さん。初めての稲刈りに汗を流す=北海道石狩市(坂本隆浩撮影)
「地域づくり組合」の制度を使って沖縄県から北海道へ移住した稲嶺盛玄さん。初めての稲刈りに汗を流す=北海道石狩市(坂本隆浩撮影)

人口減少に悩む過疎地域と、都市の移住希望者を結びつける新たな制度が全国で広がっている。国の「特定地域づくり事業協同組合(地域づくり組合)」制度。地域の事業者が組合をつくり、移住者らをさまざまな仕事へ派遣する仕組みで、地域にとっては人口増、移住者らには安定雇用のメリットがある。画期的な制度は地方創生の切り札となるか。

浜風を受けてたおやかになびく稲穂を、慣れない手つきで刈り取る。北海道石狩市の浜益(はまます)地区。稲嶺盛玄さん(46)は初めての稲刈りに取り組んでいた。

北海道から約2千キロ離れた沖縄県の出身。先月23日、「浜益特定地域づくり事業協同組合」に就職した。プロの三線奏者だったが、病気で療養するなどして心機一転、移住紹介サイトを通じ応募したという。

「北海道の暮らしを楽しみたかった。農業も漁業も未経験なので不安です」と話しつつ、額に汗をにじませながら農作業を続けた。

組合は5月、農漁業の5法人と1個人で開業。現在は稲嶺さんと茨城県出身の30代男性の2人が働く。

徳地克実事務局長(41)は「農漁業の繁忙期は人手が足りず、知人らに頼ってきたが、高齢化で人手の奪い合いが深刻だった」と説明。「それだけに期待は大きい。関心を持つ事業者も増えている」と語る。

社会保険が完備

地域づくり組合制度は令和2年6月に始まった。地域の事業者が出資する組合が移住者らを通年雇用。労働者派遣法に基づいて、繁忙期の農漁業者や観光シーズンの飲食店、旅館など、一人の職員が複数の仕事へ派遣される仕組みだ。

こうした働き方は「マルチワーク(複業)」と呼ばれる。背景には、農村では一つの仕事で生活するのは難しくても、複数の仕事を組み合わせれば生活できる現状がある。また、組合に雇用されることで安定した給与と、医療や年金といった社会保険が完備される。

総務省によると、9月末時点で27道府県に62組合が設立され、全国約450自治体で準備・検討中という。同省地域振興室の天野純之介課長補佐は「一定の成果が出てきた」と話す。

人手集めを超えて

新潟県沖の日本海に浮かぶ粟島(あわしま)。粟島浦村の「粟島浦地域づくり協同組合」は職員2人を定置網漁の会社や観光協会へ派遣する。

2人はともに島出身。本保直樹さん(49)は東京や新潟市で営業マンをしていたが、高齢の両親のこともあり帰郷した。就職の決め手は福利厚生の充実。「いい年なので、先々のことを考えてしまう」という。

組合の町田純一事務局長(61)は「来年度は人材派遣会社などを通じて県外の人材も募集し、観光協会へ派遣したい」と語る。

本土から島へUターンし、漁業会社で働く本保直樹さん=新潟県粟島浦村(本田賢一撮影)

一方、秋田県東成瀬村の「東成瀬村地域づくり事業協同組合」は2年末、全国で2番目に設立された。職員は県内移住者や村民ら4人。尾形新一代表理事(63)は「2年目の今年からようやく人材確保を本格展開している」と話す。

総務省の6月の調査で、他の都道府県からの移住者は全体の48%。残りは同じ県内からの移住者や地元出身者だった。制度が当初想定した都市からの移住者中心でなく、地元出身者がUターンする際の受け皿ともなっている現状が浮かぶ。

明治大の小田切徳美教授(63)=農村政策論=は「都市の移住者を呼び込むためには、『地域づくり』という名前が示すように単なる人手不足対策ではなく、魅力的な地域づくりの一環として制度を位置づける必要がある」と指摘する。(坂本隆浩、本田賢一、八並朋昌)

特定地域づくり事業協同組合】 過疎地への移住を後押しする国の制度。派遣職員に年間400万円程度の給与を支払えるよう、国と市町村が運営費の半額を助成する。国は年間5億円の予算を確保。来年度の概算要求では6億円を要求しており、活用を呼びかけている。

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