特攻隊の基地、鹿児島県・知覧で食堂を営み、特攻隊員から母のように慕われた鳥濱トメさん。「(彼女から伝えられた)隊員たちの真実の声、姿を残しておきたい」と、作家で元都知事の石原慎太郎氏が原作を書いた『俺は、君のためにこそ死にに行く』が9月、劇団夜想会によって7年ぶりに俳優座劇場で上演された。
同会を主宰する野伏翔(のぶし・しょう)氏は「わが国を取り巻く環境が7年前とは比較にならない程の軍事的緊張の中にあり、戦争が身近な問題となってきている」ため、どうしても今年再演したかったという。そうした社会的背景も影響してか、公演は連日満席となった。
特攻隊として散華されたのは、20歳そこそこの若者たちだ。年相応の悩み、苦しみ、そして喜びを内に秘めながら散った彼らの死は、果たして、戦後言われ続けてきたように「犬死に」だったのか。自ら肉弾となって敵艦に突っ込む「必死」の作戦は、連合国軍の心胆を寒からしめた。
劇中上映されるリアルな特攻映像は、初めて見る者には衝撃的であろう。何度も目にしている私でも、涙を禁じ得ない。実際に、観劇後のアンケートにも「衝撃を受けた」というコメントが多数寄せられたという。
これまで筆者は、パラオやサイパンを戦跡・慰霊の旅で訪れてきた。それぞれの地で確信したのは、戦後の日本の平和を守ってくれたものの「正体」であった。