子供とその家族を援助し問題を解決していく専門相談機関の児童相談所。虐待事件が起こるたび世間の厳しい目が向けられるが、プライバシーに深く関わるため、その実情は一般的にはあまり知られていない。職員たちに取材を重ね、児相の光と影を描いた小澤雅人監督(44)の短編映画「ほどけそうな、息」が7日から京都や大阪で上映される。
小澤監督は児童虐待をテーマにした映画制作のために参加した勉強会で、児童福祉の現場で働く人たちと出会った。熱い思いに触れ「事件報道から自分がイメージしていた児相の職員とは違っていた。その熱意を描きたかった」という。
取材を重ねるうちに「誰にも感謝してもらえない仕事」と話す職員の言葉が深く響いた。虐待されている子供を保護しても、一緒に住みたいと親子から恨まれる。「99件改善しても1件の失敗をすれば意味がない」「自宅にいても仕事が頭から離れない。考えてしまうから無音が怖い」。問題を解決するため全精力を注ぎ苦悩する姿を目の当たりにする半面、救った子供たちの喜びの声を胸に働き続ける姿には光も見えた。
入所2年目の若手の児童福祉司「カスミ」を演じるのはNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」で主人公の友人「きぬ」役を好演した女優の小野花梨さん。親子の関係改善のため奮闘する中で自身も成長していく。
9月3日から公開しているポレポレ東中野(東京都中野区)では、連日満席になり追加上映が行われた。小澤監督は「児相の現場が映像になることがほぼなかった。保護や支援の様子、人員不足の現状などを映像で体感することから理解を深めるきっかけになってほしい。小さな声だけどたくさんの人に届いてくれたら」と話していた。
出町座(京都市上京区)で10月7日から、第七藝術劇場(大阪市淀川区)で8日から、その後、神戸でも上映予定。44分の短編で、同監督作「まだ見ぬあなたに」(30分)と「一瞬の楽園」(27分)も同時上映される。(南雲都)