主張

ENEOS元会長 辞任理由の隠蔽は問題だ

産経ニュース
杉森務氏
杉森務氏

石油元売り最大手のENEOSホールディングスの杉森務元会長グループ最高経営責任者(CEO)が8月に辞任したのは、高級クラブで女性従業員にセクハラを行い、けがを負わせたことによる引責辞任だった。

これまで同社は杉森氏の辞任について、「一身上の都合」として一切理由を伏せていたが、週刊新潮の報道で判明した。会社側も本人も事実関係を認めている。

日本を代表するエネルギー会社のトップが酒に酔って女性を暴行する。到底許されない行為だが、報道で明らかになるまで、会社側が事実関係を公表しなかったことは、さらに致命的だ。

同社は公表見送りの理由を「被害者のプライバシー保護を最優先した」とするが、それは言い訳にならない。公表の工夫などいくらでも考えられ、トップの不祥事を組織ぐるみで隠蔽(いんぺい)したと受け取るのが自然である。

杉森氏は7月、出張先の沖縄県で地元の石油販売会社幹部らとクラブを訪れた。杉森氏は酒に酔って女性従業員の体を触り、服を無理やり脱がせた。抵抗した女性は胸の骨を折った。

女性側の弁護士からの連絡で同社が事情を知り、杉森氏も事実関係を認めた。斉藤猛社長が辞任を求め、杉森氏も深い反省を示して辞任届を提出したという。これを受けて杉森氏は、石油連盟会長や経団連審議員会副議長などの公職もすべて辞任した。

辞任は当然だが、同社はその理由をただちに明らかにすべきだった。トップの選解任は、企業統治(コーポレートガバナンス)の要諦である。社内で強い権限を持っていた杉森氏の進退に関わる非公表は、統治不全を印象付けた。

とくにENEOSは、石油元売り最大手として政府からガソリン価格を抑制するための多額の補助金を支給されている立場である。そうした企業のトップのスキャンダルを、会社全体で隠したとなれば、補助金制度に対する信頼も揺らぎかねない。

同社は「人権尊重、コンプライアンス(法令順守)徹底を経営の最優先事項と位置付けているが、元会長がこれに背く行為を行ったのは極めて遺憾だ」との談話を発表した。だが、記者会見などで説明する予定はないという。同社の法令順守意識とは、その程度のものと受け止めるほかない。

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