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悔やみきれぬ思い 論説副委員長・別府育郎

産経ニュース
安倍元首相銃撃事件があった近鉄大和西大寺駅前の現場付近=7月8日、奈良市
安倍元首相銃撃事件があった近鉄大和西大寺駅前の現場付近=7月8日、奈良市

安倍晋三元首相が選挙遊説中にテロリストの凶弾に倒れ、命を落としたことは、日本の警察史上に残る最大級の痛恨事である。

警察庁は事件の検証結果を公表し、安倍氏の背後から容疑者の接近をやすやすと許した杜撰(ずさん)な配置や、警備担当者間の連絡の不備、銃器による殺意を想定外としていた致命的な緩みなどを指摘した。

安倍氏に同行した警視庁警備部の警護課員(SP)は1人だけだった。報告書は、現役首相や海外の要人以外は警護警備計画を都道府県警任せとしてきた警察庁の責任も大きいと指摘した。

「適切な対応があれば結果を阻止できた可能性が高い」とされた結論は、安倍氏亡き後に聞いてもただただむなしく響く。

どんな言い訳も、重大な結果の前では通用しない。

そう頭では理解しつつ、直接の警備担当者の後悔を思うと、胸が痛い。痛すぎる。

安倍氏の遺体が東京・富ケ谷の私邸に帰ると、昭恵夫人は別室で泣きじゃくる警護担当者の肩を抱いて慰めたのだと伝えられる。恐らく現場にいなかったその担当者の悔しさは、どれほど大きかったろう。ましてや、現場で凶行を防げなかった警備陣の後悔は―。

随分前だが、警視庁の元警護課員を取材したことがある。彼は長年、野党の党首を担当した。

印象に残っているのは彼がこう話したことだ。

「警護の仕事とは、最後は自らが盾となることです。その覚悟と機転です」。相手の凶器が刃物であれ、銃器であれ、その基本は変わらない。こうも話した。

「警護対象者には、余計な感情を持ち過ぎない方がいい。とっさの判断の邪魔になることもあり得ますから」。ただし、屈強なSPも鋼鉄製の盾ではなく、生身の人間である。誰よりも身近で対象者と行動を共にして、情が動かぬはずはない。「言うは易(やす)く、行うは難し、ですかね」

端的にいえば、多くのSPは警護対象者に情が移ってしまうのだという。もちろん例外はあるだろうが。安倍氏の死に泣きじゃくった担当者もそれは職務上の悔恨の涙だけではなかったはずだ。

安倍氏の国葬は、27日に営まれる。海外から要人の来賓が多数参列する一方で、反対を声高に叫ぶ勢力がある。警備の失敗は許されない。なんとしても、無事に静かに送り出してもらいたい。

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