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アルピニスト・野口健<18> ゴミだらけの富士山清掃…立ちはだかる課題

産経ニュース
富士山の清掃でタイヤを運ぶ=2003年
富士山の清掃でタイヤを運ぶ=2003年

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《エベレストの清掃登山を始めた2000年、続けて富士山の清掃登山を行う。驚いたのはあまりの汚れぶりだった》


外国人の登山家から「マウント・フジは汚れている」とさんざん聞かされていましたが、実際に行ってみると、残念ながらその通りでした。ふもとからは家電製品や古タイヤ、家庭ごみなど、5合目からの山道は食料品の袋や空き缶、吸い殻など、とにかくゴミだらけ。

トイレもひどかった。当時、山小屋は排泄(はいせつ)物をそのまま捨てており、そのまま大地に染みこみ、残されたトイレットペーパーが〝白い川〟のようになっている。トイレの数自体が少なく、辺りで済ませる登山者も少なくない。どこからともなくひどい臭いが漂ってきます。

びっくりしたのは、山頂にも自動販売機が並んでいたこと。こんな山は世界中、探してもなかったでしょうね。

そもそも、富士山は登山者の数が多い。ひと夏で5合目まででも約200万人、そのうち山頂を目指す人は約30万人。入山料も、入山規制もなく、山小屋は常に混雑していました。


《富士山の清掃登山を呼びかけたが、反応は鈍い。一般の人たちは富士山がこれほど汚れていることを知らなかった》


1999年に世界7大陸最高峰登頂の最年少記録(当時)を達成した後にコーヒーのCMの話が来ました。僕は一計を案じます。ただのCMでは面白くない。エベレストで行った清掃登山の映像を背景に流せないか、と言ってみたのです。そのメーカーの親会社はスイスの会社。環境問題に関心を持っていたのでOKをもらいました。

反響はすごかったですね。富士山の清掃登山の参加希望者が一気に増えましたから。

それから、メディアと一緒にキャンペーンをやったり、講演会で話したり、イベントでゴミを展示したりして、社会の関心が高まっていきました。(登山者が登り始める)5合目から上のゴミはかなり減ったと思います。ただし、富士山にはまだ課題が山積していました。


《課題とは、関係自治体の連携が取れず、むしろ関係が悪かったこと。登山者や観光客を制限する(結果、ゴミも減る)こと(マイカー規制など)や、欧米では当たり前に行われている入山料の徴収などだ》


入山規制や入山料の問題を口にすることは「タブー」でした。登山者や観光客が減ると地元に落ちるお金も減る。だから、観光業者や自治体、さらにその意向を受けた政治家たちは、そのことに触れたくない。

さらに驚いたことに、富士山の山頂付近が「私有地」だったことです。そのために、国立公園なのだけれども、国は強い態度を取れない。自販機が山頂に並んでいても文句も言えない、というのです。僕は、おかしいと思いました。


《この間、微生物の力で排泄物を分解処理するバイオトイレの導入や、任意の〝入山料(保全協力金、1人1000円)〟の徴収やマイカー規制の促進などが進む。これらは富士山を「世界遺産」に登録しようとする運動と連動していた》


当時の僕は、富士山を世界遺産に登録することは、むしろマイナス面の方が大きいのではないか、と懸念していました。世界遺産になれば、さらに訪問者は増えるだろうし、イコモス(ユネスコの諮問機関)からさまざまな改善を求める「宿題」もクリアせねばなりません。

他国では、こうした課題をクリアできず、いったん登録されても取り消されたケースもありましたから。(聞き手 喜多由浩)

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