犯罪被害者支援員、養成講座に記者が参加 「地域社会で理解を」

産経ニュース
犯罪被害者支援員養成講座の様子=7月31日、千葉市中央区(久原昂也撮影)
犯罪被害者支援員養成講座の様子=7月31日、千葉市中央区(久原昂也撮影)

被害者からの電話相談や面談に対応し、状況に応じて法廷や病院へ付き添うなどの支援を行う有償のボランティア「犯罪被害者支援員」の養成講座にこのほど、記者2人が参加した。講座を通して、善意で言ったことが逆に被害者を傷つけたり、報道による二次被害で被害者が苦しんだりすることがあると学んだ。また、地域社会が被害者への理解を深めるとともに、他国に比べて手薄い支援体制を充実させる必要があると痛感した。

上下関係と違う

参加したのは、千葉県から委託を受けた千葉犯罪被害者支援センター(千葉CVS)が千葉市内で開いた支援員養成講座の入門編。県内では今回を含め船橋市などで計3回、同じ内容で実施され、延べ60人、高校生から高齢者まで幅広い年代の方が参加している。

講座は支援員を養成する目的で行われているが、入門編は公開講座となっており、誰でも無料で参加できる。犯罪被害者支援への理解を深めることも、講座の大切な目的だ。約1時間の講義が5コマ開かれ、弁護士や県警被害者支援室、千葉CVSの相談員が、犯罪被害の現状や支援体制の歴史、各機関の連携などを説明した。

「『時間が解決してくれる』といった言葉は言ってはいけない」。犯罪被害者が置かれた実情や生活支援、法的支援の必要性を解説する中で内海文志弁護士が、具体的な声かけに言及した。被害者遺族に対して、「悲しんでいると(被害者が)成仏できない」と言うのも禁句だという。

また内海弁護士は、「犯罪被害者支援は、救う側と救われる側の上下関係ではない」と強調。助けようとする自分の思いが先行し、被害者の意見を無視していないかを常に注意しなくてはならないと説明した。

行動する機会に

千葉CVSの相談員らは、民間であるからこそ長期的に支援できると強調。被害者と会う際は、第一印象を大切にし、清潔感を忘れないようにすると話した。また、対面する際には飲み物を何種類も用意し選んでもらうことで、被害者の主体性を大切にするという。このような細やかな気遣いの大切さに気付かされた。

講座の終盤では、娘を殺された家族の苦しみや二次被害が描かれたノンフィクションドラマを視聴。参加者全員で感想を発表する機会が設けられ、「被害者をありのまま受け入れることが大切」「かける言葉一つで被害者の心情は左右される」「被害者の気持ちをわかったつもりになっていた」などの感想が飛び交った。感想を述べる際には自身が参加した経緯も共有しあった。他の参加者の考えを知ることが、犯罪被害者への理解にもつながるのではないかと感じた。

講座に参加した経営者の山下尚美さんは、「家族が被害者になったとき、自分に何ができるかを考える機会になった」と話した。

〝手薄い〟日本

講座の最後に、千葉CVSの小菅広計事務局長は、2020年に各国が犯罪被害者に支給した総額の国民1人当たりの負担額がスウェーデン129円、ドイツ592円、フランス742円に対し、日本は6円に過ぎないと指摘。また、刑務所を管轄する法務省矯正局の令和4年度の予算は約2369億円、仮釈放中の受刑者らを保護観察する同省保護局の予算(同年度)は約275億円であるのに対し、被害者への給付金は年間約10億円前後にとどまっているという。

参加者の印西市で保護司を務める竹沢茂一さん(60)は、「犯罪者に対する国の支援は多いが、被害者に対する支援は少ないので、平等にする必要があると思う」と語った。被害者支援の充実は急務だ。

千葉CVSの相談受理件数はここ数年、増加傾向にある。3年度は計2639件受理したうち、性被害に関する相談が約6割を占めた。県内の刑法犯認知件数は年々減少しているが、凶悪犯罪認知件数に大幅な変化はない。

「今この瞬間身近な人が犯罪被害者になっているかもしれない」。常にそう考えて過ごすことは容易ではないが、心に留めておきたい。被害者が再び平穏な生活を送るためにも、社会の一員である私たちが自分事として想像することが、被害者支援の第一歩になると感じた。(前島沙紀、久原昂也)

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