本来ならば、プーチン氏は中国に対して「軍事支援」を懇願し、可能ならば「核の使用」についても、事前に中国から「暗黙の同意」を得たかったはずだ。ところが、支援を求めるどころか、形勢不利に傾いている戦況について、説明しなくてはならないハメに陥ってしまった。
これでは、とても核使用について中国の出方を探るどころではない。「準同盟関係」と言っていい中露の親密な関係を維持するのが精いっぱいだったのだ。こんな発言から始まった両者の関係は、会談前から、かなりの緊張と腹の探り合いが始まっていた、とみていい。
習氏が、プーチン氏の説明に納得したかどうかは分からない。だが、疑心暗鬼が解消されたとは思えない。
少なくとも、当面は戦況が劇的にロシア有利に逆転する見通しはないからだ。それどころか、ロシアが敗北を喫したら、どうなるか、習氏は心穏やかではないだろう。
開戦前の2月、両氏は北京で会談し、中露両国の「無制限の友好関係」を約束した。ところが、もしもロシアが敗北して、プーチン氏の政治的立場が揺らいでしまったら、直ちに習氏の政治基盤を直撃する。「戦略判断の誤り」が明確になるからだ。