地方に勝機

塗るだけで発電するインク 小山高専発のベンチャーに熱視線

産経ニュース
容器に入った発電インク。ペンキのようにはけで塗るだけで太陽電池になる(石川忠彦撮影)
容器に入った発電インク。ペンキのようにはけで塗るだけで太陽電池になる(石川忠彦撮影)

小山工業高等専門学校(小山高専、栃木県小山市)発のベンチャー「ソーラーパワーペインターズ」(同市東城南)で開発が進む「塗るだけで太陽光パネルになる発電インク」が注目を集めている。従来の太陽光パネルと違い、壁や窓などに塗って発電する仕組みで「軽くて安く設置場所も選ばない近未来の太陽電池」(同社)だからだ。県内企業などと研究開発を進めており、発電するブラインドとして5年後の製品化を目指している。

設備投資10分の1

同社は小山高専機械工学科の加藤岳仁教授(43)を会長に、ともに茨城高専(茨城県ひたちなか市)から小山高専専攻科に進んだ同級生、下山田力社長(42)が3月に立ち上げた。

発電インクは加藤教授が小山高専修了後に進んだ九州工業大大学院時代から20年研究を続けてきた技術で、正式には「塗布型有機無機薄膜太陽電池」という。半導体と金属の両方の特性を持つ物質からなる。光を吸収する発電層の色を赤や黄、緑、青、黒色など自在に変えられ透過性がある。

シリコンを使う従来のソーラーパネルが変換効率15~20%なのに対し、発電インクの変換効率は7%程度と劣るものの、軽くて設置場所を選ばないのが特長。紙や布への塗布も可能で、蛍光灯や発光ダイオード(LED)など室内光での発電もできる。鉛などは使っておらず廃棄やリサイクルも可能で、従来型に比べ設備投資も10分の1程度に抑えられる。すでに特許を取得している。

加藤教授は「自然環境との調和を目指した、近未来の太陽電池」と自信を見せる。現在、B5判サイズまでの開発が進み、県北の農家のビニールハウスで実証実験中。当面は太陽光発電フィルムとして窓用ブラインドの製品化を目指す。

どこでも使える技術

開発のきっかけは、東日本大震災だった。

加藤教授は当時、住友化学の研究員として太陽電池開発に携わり、変換効率で世界最高を達成していた。しかし、震災では自宅が停電し、妻は布団の中で生まれたばかりの子供を抱えて暖をとった。「自分の研究はいざとなったら無力。ならば誰でもどこでも使える発電技術を開発しよう」と小山高専の教員に転身した。

耕作放棄された茶畑で栽培した茶の実油から化粧品などを製造し販売していた下山田社長と再会したのは5年前。下山田社長が鳥獣害対策や農地での電力供給などを加藤教授に相談した際、加藤教授の発電インクの存在を知り、事業化を決めたという。

2人は未来の技術者育成にも注力。持続可能な開発目標(SDGs)の実現を目的に令和元年10月に高専初のNPO法人「エナジーエデュケーション」を設立。全国の高専や大学、企業などと連携した高専発の「Society5・0型未来技術人財」育成事業にも参画した。

発電インクを塗ったフィルムを持つ加藤岳仁教授(右)と発電インクを手にする下山田力社長(石川忠彦撮影)

注目、期待相次ぐ

今夏の電力需給逼迫(ひっぱく)などで再生可能エネルギーが注目される中、発電インクに対する期待も高まった。「企業から問い合わせ、見学が相次いでいる」(下山田社長)という。

2年には、自由で挑戦的な研究に対し、研究費を支援する科学技術振興機構の「創発的研究支援事業」に採択された。昨年12月にも、めぶきフィナンシャルグループが革新的、創造的ビジネスプランを表彰する第5回めぶきビジネスアワードの優秀賞にも選ばれた。

加藤教授の最終目標は「途上国で手軽に電気のある生活を提供すること」。下山田社長は「10年後、はけで塗れる発電インクとして、ホームセンターで買えるようにしたい」と熱く語った。(石川忠彦)

  1. 中露〝蜜月崩壊〟習主席がプーチン氏見捨てた!? 「ロシアの敗北は時間の問題」中国元大使が発言 インドの浮上で変わる世界の勢力図

  2. 名脇役の斎藤洋介さんが死去 69歳、人知れずがんで闘病

  3. 中村玉緒の息子・鴈龍さん、孤独死していた…55歳

  4. 【スクープ最前線】「核テロ」か「亡命」か 窮鼠のプーチン大統領が狂乱状態に 「台湾統一」難しくさせたと習主席は激怒 盟友から一変、首脳会議で何が

  5. きよ彦さん死去…毒舌キャラでタレントとしても人気集めた着物デザイナー