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キリシタンの隠れ里 脱炭素化を牽引 福江島(長崎県五島市)

産経ニュース
「日本の渚百選」に選ばれ、日本一美しい砂浜といわれる高浜海水浴場
「日本の渚百選」に選ばれ、日本一美しい砂浜といわれる高浜海水浴場

国境近くに位置する長崎県の五島列島で最大の面積を持つ福江島は、古代から大陸と本土を結ぶ海上交通の要衝だった。延暦23(804)年に空海や最澄が遣唐使船で中国へ渡る際は、国内最後の寄港地となった。

江戸時代は五島藩主のお膝元として発展。寛永11(1634)年に、第2代藩主の五島盛利が各地にいた藩士を福江地区に定住させて城下町を形成した。異国船の往来が頻繁になった幕末の文久3(1863)年には、幕命によって国防を目的とした福江城を築いた。城内に造営された隠殿(隠居所)屋敷の「五島氏庭園」は、金閣寺の丸池を模して造られた回遊式の美しい庭園で、平成3(1991)年に国の名勝として指定を受けた。

五島藩は大村藩の了解を得て、寛政9(1797)年に土地の開拓をさせるため、外海(そとめ)地区から大村藩の領民を移住させている。その後も移住は続き、最終的に3千人以上に達したという。その多くはまだキリシタン弾圧が緩かった五島へ信仰の自由を求めてきた潜伏キリシタンだった。

福江島内にある教会は、すべて明治時代の禁教令解除後に建てられたものだ。堂崎教会は明治12(1879)年に五島で初めて建てられた天主堂で、その後、現在の場所に移され、同40(1907)年に今のレンガ造り、ゴシック様式の姿となった。ひそかに信仰を守り続けた信者の受難と勝利の象徴として評価されている。

和洋建築が混合した美しい水ノ浦教会
和洋建築が混合した美しい水ノ浦教会

近年、五島で新たな〝開拓〟が成し遂げられた。日本は世界第6位の領海と排他的経済水域(EEZ)を持つ海洋大国で、洋上風力発電が再生可能エネルギーの電源の柱となれば、未来を支える一翼となる。平成22(2010)~27(2015)年度にかけて五島市が協力し、環境省の浮体式洋上風力発電実証事業を実施。国内初となる商用規模の浮体式洋上風力発電施設「はえんかぜ」を同市の椛島(かばしま)沖に設置することに成功した。その後は福江島の崎山沖に移動させ、本格的に商用運転を始めた。

「はえんかぜ」は2千キロワットの発電機を搭載。起き上がり小法師のように、どんなに傾いても起き上がる構造だ。台風などで所定の風速を超えると、発電が止まり、風を受け流すようになっている。

島を歩くと、江戸時代最後の城郭である福江城や武家屋敷通り、温泉のあるレトロな集落といった文化景観と、全山芝生に覆われた臼状の鬼岳(おにだけ)などの美しい自然景観に出合える。こうした島の宝に、脱炭素化に向けた再生可能エネルギーの活用を牽引(けんいん)する〝五島モデル〟も加わった。すべてが世界に誇れる日本の宝だ。

■アクセス 長崎港(長崎県)や博多港(福岡県)から船が運航。長崎と福岡から空路もある。

■プロフィル 小林希(こばやし・のぞみ) 昭和57年生まれ、東京都出身。元編集者。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。帰国後に『恋する旅女、世界をゆく―29歳、会社を辞めて旅に出た』(幻冬舎文庫)で作家に転身。主に旅、島、猫をテーマにしている。これまで世界60カ国、日本の離島は120島を巡った。


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