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無料で先端IT技術学ぶ「42東京」 露天商出身実業家が開校 教育制度に一石

産経ニュース
学生同士が教え合いながら「解」を求め、技術を磨いてゆく。右端が奈良昴さん=東京都港区の「42東京」(重松明子撮影)
学生同士が教え合いながら「解」を求め、技術を磨いてゆく。右端が奈良昴さん=東京都港区の「42東京」(重松明子撮影)

世界的に慢性化するIT人材不足のなか、高度なプログラミング教育を無料で提供する学校「42(フォーティーツー)東京」(東京都港区)が開校2周年を迎えた。学歴不問で応募条件は16歳以上のみ。ただし入試期間は4週間にわたり、合格率4%の狭き門だ。都心の恵まれた環境で現在、443人が学んでいる。生き生きとディスカッションする若者の輪の中には、子供時代からの不登校経験者も珍しくなく、日本の教育制度に一石を投じている。

教え合い成長、不登校も克服

この学校は、19歳でアクセサリー露天商から身を起こし、現在のDMM.comを創業した亀山敬司会長(61)が55億円を投じ、大手IT企業など21社の協賛も得て設立した。

「誰もが平等に挑戦できる、世界に通用する実践的な教育機会を無料で提供したい。商売で金もうけばかりやってきた私がお金にならないことをやっているが、日本のITエンジニア不足は深刻。将来、出世した学生が恩を感じてくれたらいい。社会実験的な興味があった」と亀山会長。

学費完全無料▽24時間利用可能な施設▽問題解決型学習。この3つを柱とするIT人材養成機関として、フランスで1万人超の卒業生を輩出する「42Paris」の東京校として誘致した。「42」とは、ダグラス・アダムスのSF小説「銀河ヒッチハイク・ガイド」の、生命、宇宙、万物への究極の問いへの回答の数である。

42東京は令和2年6月に開校し、累積合格者数は870人。卒業という概念はなく、学生は個人の裁量で就活や起業に挑戦する。すでに107人がメルカリやサイバーエージェントなどの大手ほか、スタートアップ企業で働いている。

今年7月、本部パリの校長やデジタル庁の官僚らが来席するなか、2周年の活動報告会が行われた。

「学生間で教え合いながら学んでゆく『ピア・ラーニング』にほれ込んでいる」と亀山会長。学生も登壇し、「ギブ&テイクの精神を持った魅力的な仲間との交流で自分の夢が明確になり、人生の分岐点になった。起業して成功し、必ず還元したい」(20歳男性)と応える場面もあった。

〝学び舎〟は六本木。DMM.com本社が入居する高層ビルだ。広いフロアに大型パソコンが並んでいる。学生は世界の先端企業が求める新たな課題を教材とし、学生同士が教え合いながら「解」を求め、技術を磨いてゆく。

学生同士が教え合いながら「解」を求め、技術を磨いてゆく。右端が奈良昴さん=東京都港区の「42東京」(重松明子撮影)

幾何学模様が映し出された画面を操作しながら、「次々に同じ図形が出てきます。マンデルブロ集合といって…」。快活に説明してくれる奈良昴さん(21)が、小学校から不登校を繰り返してきたと聞き、個別の取材をお願いした。

「太っていたのと勉強ができたので、いじめっ子の標的になりやすかった」

悪口、上履き隠し、髪を引っ張られる…。「周りが幼く見えた。それが伝わって、さらに相手を刺激したのかも。辛くて、学びを阻害する人がいる場所に行きたくないと思った」

中学校にも登校せず、通知表はオール1だったが、入試で点を取り、工業高校に進学。1年ほど通い、高卒認定試験に受かったのを機に中退した。進学も就職もしないでいた19歳。42東京の存在を知り、入試に挑戦。見事突破した。

「この2年間で変わったことは、人と話すのが楽しくなったこと。日本の学校では当たり前の生徒横並び、先生からの一方通行の授業とは対極にある。課題に対してまず自分で調べ、仲間にも聞いてみて、コードを書いてみる。この勉強法が自分に合っている」

親が自分を信頼し、不登校も「問題ない」と楽天的に受け入れてくれたことに、改めて感謝しているという。「将来は、人々が使うものの基盤となる仕組みを作りたい。今は技術を学んでいるが教養を学ぶことも大切なので、大学にもいつか行ってみようと思う」

未曽有のIT人材不足が、学び方の多様性も教えてくれているようだ。(重松明子)

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