従来の陽子線治療を覆す 放医研スタートアップが超小型装置を開発 安全で質の高いがん治療を身近に

小型化の決め手は“回転しない”照射装置

小型化の決め手は、陽子線を曲げる「超伝導」技術にある。

一般的な陽子線治療装置では、患者に対して360度全方位から陽子線を照射する回転照機構(回転ガントリー)があり、そこに高速な陽子線を曲げるための巨大な電磁石が複数搭載される。このため、回転ガントリーそのものを大型化する必要があった。その結果、ガントリーは200トン近い重さとなり、スペースとコストが必然的にかさんでしまっていた。

古川さんはこの構造を根本から変える「非回転ガントリー」を考案し、特許を取得。偏向電磁石に超伝導技術を採用し、ガントリー内部で自在に陽子線を曲げることを可能にし、ガントリーを回転させることなく患部に多方向から陽子線を照射できる仕組みを開発した。その結果、従来装置に比べて高さを約3分の1、重さを約10分の1にまでサイズダウンすることに成功した。

超小型陽子線治療装置による照射イメージ(ビードットメディカル提供)
超小型陽子線治療装置による照射イメージ(ビードットメディカル提供)

現在薬機法の承認に向けて申請中で、「早ければ半年後の来年1月には実用化される予定」(古川さん)だという。これまでの陽子線治療装置の価格は1台50億円前後が相場とされるが、ビードットメディカルの超小型装置は20億円程度に抑えられている。小型化に加え、価格面での導入ハードルを下げることで、2031年までに日本を含め世界で約700台の販売台数を見込む。

X線治療から置き換わる未来も

がん患者に対するアンケートでは、治療に際して、生存率よりもQOL(生活の質)の維持が重視されているという結果も出ている。古川さんは「陽子線治療は放射線治療の中でも治療効果が高く、副作用も少ない。しかも日常生活を大きく変えることなく通院で治療を続けられる。働き世代のがん患者が増えている現代においてニーズの高い選択肢となる」との見方を示す。また、同社が放射線治療施設を対象に実施したアンケートでは、800施設中4分の1にあたる約200施設が「コストとスペースの障壁が解消されれば陽子線治療装置の導入を検討したい」と答えており、現場からの期待も感じているという。

古川卓司(ふるかわ・たくじ)。ビードットメディカル 代表取締役。理学(博士)。千葉大学大学院在学中に放射線医学総合研究所へ入所し、以降20年以上粒子線がん治療システムの設計・開発・運用に数多く携わる。2012年文部科学大臣賞を受賞。立教大学客員教授(撮影:後藤恭子)

装置を導入する施設が増え、症例の蓄積が進めば保険適用の対象となるがん種の拡大、さらにその先には「既存のX線治療装置からの置き換え」という可能性も見えてくる。古川さんは「新規がん患者が毎年100万人いるといわれている今、体への負担が少ない陽子線治療を受けられるがん患者を一人でも多く増やしていきたい」と意欲を示している。(後藤恭子)

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