従来の陽子線治療を覆す 放医研スタートアップが超小型装置を開発 安全で質の高いがん治療を身近に

安全で治療効果が高いがん治療として注目される「陽子線治療」が身近な医療機関で受けられる─そんな未来が近づいてきた。陽子線治療は重さ200トンにも達する装置の大きさや導入コストがネックとなってきたが、放射線医学総合研究所(放医研)発のスタートアップであるビードットメディカル(東京都江戸川区)は、現在普及しているX線治療装置と同程度の大きさの陽子線治療装置を開発。早ければ来春にも臨床導入が実現する見込みだという。装置の小型化は普及拡大に向けた大きな一歩として、医療現場からも期待が寄せられている。

放医研発のスタートアップ、ビードットメディカルが開発した超小型陽子線治療装置(撮影:後藤恭子)
放医研発のスタートアップ、ビードットメディカルが開発した超小型陽子線治療装置(撮影:後藤恭子)

「患者に届かなければ医療ではない」

陽子線はX線と同じ放射線の一つ。水素の原子核に含まれる陽子を光速の6割程度に加速し、がんの病巣に照射する治療法を陽子線治療という。X線ががんの病巣だけでなく、正常な細胞にもダメージを与えてしまうのに対し、陽子線は狙った病巣でダメージを最大化することができる。このため、陽子線治療は正常な組織への影響を最小限に抑え、高い治療効果が得られるという特徴がある。

国内で放射線治療といえばX線治療が主流だが、陽子線治療が保険適用の対象となる疾患も増えてきた。小児がんや、前立腺がん、骨軟部腫瘍、一部の頭頸部がんのほか、今年度の診療報酬改定では新たに進行性の膵がんや肝細胞がんなど4疾患が保険適用の対象に加えられた。

しかし陽子線治療の普及度はまだまだ低いのが現実だ。

「実際に陽子線治療を受けられる患者はごく一部。誰もが簡単に受けられる治療法とは言い難い」と、ビードットメディカルの代表取締役社長、古川卓司さん(44)は指摘する。

普及を妨げている要因は、高さ約10メートル、重さ約200トンという巨大な装置。導入にはテニスコートほどの広いスペースと装置を格納する専用の建屋が必要となるため、導入している施設は全国でわずか19カ所(2022年8月現在)にとどまっているのが現状だ。

従来の陽子線治療装置とX線治療装置と比較したビードットメディカルの超小型陽子線治療装置のサイズのイメージ(ビードットメディカル提供)

かつて放医研で研究リーダーとして陽子線をはじめとする粒子線がん治療システムの設計・開発を手掛けていた古川さんは、「治療法としては優れていても、多くの患者に行き渡らなければ本当の意味で医療とはいえない」と研究に対してジレンマを感じていた。

陽子線治療を誰もが受けられる治療法にするためには、装置を小型・低価格化することが重要と考えた古川さんは2017年、放医研のメンバーとともにビードットメディカルを立ち上げた。その後、国が「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太の方針)で陽子線治療について装置の小型化や低コスト化による普及の必要性を明記したことなどが追い風となり、多額の資金調達にも成功。4年の開発期間を経た今年2月、すでに普及しているX線治療装置のような大きさの超小型陽子線治療装置を完成させた。

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