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女優・泉ピン子<14> 極寒の川に6時間「おしん」名場面秘話

産経ニュース
主人公の母役で出演したNHK連続テレビ小説「おしん」がヒット (本人提供)
主人公の母役で出演したNHK連続テレビ小説「おしん」がヒット (本人提供)

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《昭和58年、橋田寿賀子さん脚本のNHK連続テレビ小説「おしん」が始まり、主人公おしんの母、ふじを演じた。明治末の東北の農家の主婦として、貧しさに耐え、必死に生活と闘う姿が視聴者の共感を呼んだ》


NHK大河ドラマ「おんな太閤記」(56年放送)の打ち上げの際に、橋田先生から「次に『おしん』というのをやるから、出てくれないか。口減らしで子供を中絶するために、川の中につかる役で…」と誘われました。最初は断ろうとしたのですが、(「おんな太閤記」で共演した)西田敏行君が「お前、やるべきだよ。NHKで、川の中で口減らしをするなんて、すごいことだよ」と背中を押してくれました。

それでも不安はありました。私はそれ以前にNHK連続テレビ小説「なっちゃんの写真館」(55年放送)という作品に出演していますが、その際に撮影した場面を大量にカットされていまして。朝ドラって、主人公の家族の役じゃないと、出番をほぼカットされてしまうのですよ。私は喫茶店のママ役で、とてもたくさんの出番がありましたが、放送を見ると、それの大半が削られていました。

私の不安を聞いて、橋田先生は「大丈夫、絶対にあんたの出番をカットしない。だって主人公の母親役だから」と言いました。「じゃあ、やります!」と出演することにしました。

川の水につかって子供を死なせる、というシーンですが、橋田先生から聞いたのは真夏だったので、そんなに大変な撮影ではないと思っていました。ところがNHKが来たのは、2月…。「そろそろ、あのシーンを撮影しましょう」と言われて、「えっ、待ってください。寒いですよ。夏にしましょう」「ダメです。夏じゃ(腹の中にいるという設定の子供が)育っちゃうでしょう」という問答をして、ロケ先の山形県に連れて行かれました。

撮影では地元の方が「良かったですね、今年は雪が少なくて」と仰(おっしゃ)っていたのですが、東京育ちの私からしてみれば「どこがだよ…」です。雪が降り、最上川の流れが速い速い。


《橋田さんはピン子さんの体調をおもんぱかって、その川の中のシーンだけは代役の若い女優を用意していた》


でも、西田君が「お前な、役者として絶対に吹き替え(代役)使うなよ。使ったら恥ずかしいぞ」と言うのです。「そうだな」と思い、「私は使いません」と断りました。

厚い雪に覆われた極寒のなか、川の水が冷たいではなく、痛いのです。そこに6時間ほどつかっていました。当時の私は体重が40キロほどで、衣装の下に子供用のゴム長を用意してもらったのですが、さすがに小さくて鬱血してしまったため、ゴミ袋を体に巻くことになりました。そうしたら間から水が入ってきてしまって大変でした。

映像だと3分くらいしかないので、そんなにつかっていたとは思わないでしょうね。でも、やってよかったと思います。あの紫色の唇とか、凍える体とか…、実際にやった人間でないと表現できません。

興味深かったのは、川から上がって、近所のお宅の風呂に入らせてもらったとき、最初は水風呂だったことです。凍えるほど寒い中で撮影していたので、なぜ水風呂に入らせるのだと不思議に思いましたが、体が冷えすぎているときは、急に熱い湯に入ると具合を悪くするそうですね。水からたいて少しずつ温度を上げていってくれました。

ちなみにその撮影の後、生理が3カ月止まりました。心配になって婦人科を受診したら、「死ぬようなことをするからだ」と医師から怒られました。

けしかけたくせに、西田君は「だから吹き替えを使えって、俺は言ったんだよ」と無責任なことを言っていました。(聞き手 三宅令)

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