主張

終戦の日に 抑止力高め平和を次世代へ、首相と閣僚は靖国参拝を 論説委員長 榊原智

産経ニュース

77回目の終戦の日を迎えた。先の大戦で軍人、民間人合わせて310万人の同胞が亡くなった。全ての御(み)霊(たま)安かれと、心から祈りたい。

その上で、問いたい。この方たちを、気の毒な犠牲者だと捉えるだけでいいのだろうか―と。

「17/8/05」

この数字をご存じだろうか。本紙で紹介したことがあるが、改めて取り上げたい。

これは、ジャカルタの独立記念塔に収められたインドネシア独立宣言書の日付で、「05年8月17日」を意味する。05年とは日本紀元(皇紀)2605年のことだ。昭和20年、西暦1945年に当たる。

独立運動の指導者で、後にインドネシアの初代大統領と副大統領に就くスカルノとハッタの2人がこの独立宣言書に署名した。スカルノはテレビ番組で活躍するデヴィ夫人と結婚した人だ。そう知れば、歴史が身近に感じられるかもしれない。

独立宣言の意外な表記

スカルノらはインドネシア人だけで宣言書を起草した。強制されていないのに、先の大戦に敗れた直後の日本の紀年法を独立宣言書に用いた意味は重い。日本を侵略国と断罪する自虐史観では説明できまい。

日本は先の大戦で、植民地支配していたオランダをインドネシアから追い出し軍政を敷いた。愚民化政策のオランダと違って、日本は官吏育成学校や師範学校などを設け、国づくりに必要な教育を始めた。

祖国(郷土)防衛義勇軍(略称PETA)をつくり、3万8千人のインドネシア青年を訓練した。彼らは大戦後、再び支配しようと乗り込んできたオランダ軍を相手に独立戦争を戦う中心となった。日本へ引き揚げずにインドネシア独立の戦いに身を投じた日本軍将兵は1千人から2千人いたとされる。

平成27(2015)年のことだ。安倍晋三首相(当時)はインドネシアで開かれた「アジア・アフリカ会議(バンドン会議)60周年記念首脳会議」出席の際、国立英雄墓地を詣(もう)で、残留日本兵の墓前に献花した。その静かな意味をきちんと報じたメディアは見当たらなかった。

昭和30(1955)年に同国で開かれた第1回アジア・アフリカ会議に日本代表団が招かれ、「よく来たね」「日本のおかげだよ」と引っ張りだことなって歓迎された史実もほとんど知られていない。

これは、代表団の加瀬俊一代表代理(初代国連大使)が後に講演で次のように明らかにしている。

「『日本が大きな犠牲を払ってアジア民族のために勇戦してくれたから、今日のアジアがある』ということだった」(楊素秋著『日本人はとても素敵(すてき)だった』桜の花出版)

アジア・アフリカの新興国の多くの代表が、わずか10年前の日本の戦いを、独立に貢献したという文脈で語っていた場面があったわけだ。

日本では自国の歩みをあまりにも否定的に捉える言説が今も多く、それと食い違う史実は顧みられない。公平さを欠いていないか。戦争はできる限り避けるべきもので、先の大戦にさまざまな評価があるのは当然だが、人種平等や欧米植民地支配打破をめぐって、日本を評価する見方があることも知っておきたい。

分水嶺に立つ自覚持て

戦争で亡くなった人々を悼むなら彼らが営んだ当時の日本を侵略国と決めつけ、断罪していいものか。岸田文雄首相と閣僚には、全国戦没者追悼式出席に加え、靖国神社に参拝してほしい。それは、現代日本の防衛意志を内外に示すことにもなる。何より、最も大切な天皇陛下のご親拝再開につながる。

靖国神社で永くお祀(まつ)りするのは、英霊との国の約束だ。英霊を気の毒な犠牲者としか見ないようでは話にならない。追悼とともに、日本のために尊い命を捧(ささ)げたことを顕彰し、日本が侵略されれば、今の世代も子孫のために日本の国と国民を守り抜くことを誓うべきである。

日露戦争の英霊も靖国神社に祀られている。負ければ日本という国が消え、アジア・アフリカの植民地支配はもっと続いたかもしれない。それなのに日本は、日露戦争終結100年の平成17年に国として記念行事をしなかった。ウクライナ国民が侵略者ロシアと戦う姿を見た今なら、明治の人々が必死に戦ったから現在の日本があると分かるだろう。

特に幕末維新後、どの世代も子孫に立派な日本を引き継ごうと努めてくれた。今はわれわれの番だ。中国や北朝鮮など専制主義の差し迫った脅威から目をそらしてはご先祖さまに申し訳ない。戦う前に抑止力で侵略を防ぐ時代になった。防衛力の抜本強化と同盟国との協力で平和を守りたい。それができるかどうかの分水嶺(れい)にわれわれは立っている。

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