戦没者慰霊碑をどう守る 遺族ら高齢化で維持管理課題

産経ニュース
戦没者の慰霊のために建立された観音像。遺族会が解散し、維持管理が課題となっている=愛知県南知多町
戦没者の慰霊のために建立された観音像。遺族会が解散し、維持管理が課題となっている=愛知県南知多町

先の大戦で命を落とした戦没者をしのぶため、各地に建てられた慰霊碑の維持管理が、担い手となってきた遺族らの高齢化で困難になっている。国の調査では、ひび割れや倒壊の危険があるとされた慰霊碑は780基。戦後77年が経過し、戦争経験者が少なくなるなかで、慰霊碑を今後どのように維持管理し、後世に戦禍を伝えるのか、課題に向き合うべき時を迎えている。

「後継者がいない」

愛知県南知多町の小高い場所に立つ平和観音像。先の大戦の戦没者の慰霊のために設けられたが、台座にはひび割れも目立つ。遺族らで作る「内海山海(うつみやまみ)遺族会」が管理していたが今年3月に解散し、町では誰が今後慰霊碑を維持管理するか、という問題に直面した。

6月の町議会では「地権者から求められている」として、国の補助金を活用して移設や撤去ができないかを町議がただしたが、町側は倒壊の危険などがないことを理由に、「補助制度を利用することは難しい」と答弁。維持管理については「町も含め、関係機関と話し合いをもって決めていくことが必要」とした。

遺族会員だった林つね子さん(83)は解散の理由を「私も含めて遺児は高齢化し、活動を引き継いでくれる人がいなかった」と語る。会が所有していた戦没者の氏名を記した掛け軸は保管先が見つかったものの、慰霊碑の行く末が気がかりだという。問題を町議会で取り上げた片山陽市町議は「どこでも起こり得る事態だ」と指摘する。

遺児は80歳超え、移設や撤去も

国の調査によると、国内に民間が建立した戦没者慰霊碑は1万6235基(平成31年4月現在)。このうち、ひび割れや倒壊の危険があるなど、管理状況が「不良」「やや不良」とされた慰霊碑は合わせて780基。「不明」も1495基ある。

維持管理は主に、地元の遺族会が担ってきた。だが日本遺族会によると、全国の会員数は記録が残る昭和42年の約125万世帯から、平成31年には約57万世帯にまで減少。遺児の平均年齢は80歳を超えており、市町村単位では解散に至った遺族会もある。

国は、建立者が不明で維持管理が適切に行われず、倒壊などの恐れがある慰霊碑については、自治体が移設や撤去する際に費用の半額(上限25万円)を補助する制度を平成28年度に開始。令和元年度には上限を50万円に引き上げた。厚生労働省によると、制度を活用して昨年度までに移設や撤去された慰霊碑は17基に上るという。

倒壊の危険性、国の制度活用も

三重県いなべ市では、制度を活用して寺の敷地内にあった慰霊碑を撤去。昭和29年に建立された碑は台座とのつなぎ目にひびが入るなどしており、倒壊の危険性があった。市の担当者は「建立者は亡くなり、管理する人もいない。地元の要望もあり、やむを得ない判断だった」とする。

台座とのつなぎ目にひびが入るなどし、撤去された慰霊碑(三重県いなべ市提供)

同様に、市立小学校2校にあった先の大戦の戦没者慰霊碑を校内の別の場所や市有地に移設したのは鳥取県倉吉市。「児童の安全を考えた措置」(担当者)といい、今後も補助制度の活用を検討している。

北海道白老町は、神社の境内にあった忠魂碑を人通りが少ない場所に移した。碑は日清、日露戦争の戦没者をしのぶ目的で大正11(1922)年に建立されたという。担当者は「むげにするのは忍びない。関係者の理解のおかげで移設することができた」とする。

ただ、国の制度は危険性の高い慰霊碑を移設するなどし、安全性を確保することが目的であり、慰霊碑の存続は当事者に委ねられている。日本遺族会の水落敏栄(としえい)会長は「平和を伝えるシンボルとして、慰霊碑を残す必要がある。維持や管理を自治体などが行うよう、適切な対応を国に要望している」としている。(吉田智香)

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