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女優・泉ピン子<11> 肺に影…逃せないドラマ初主演

産経ニュース
ドラマ「手ごろな女」で初主演を飾ったころ
ドラマ「手ごろな女」で初主演を飾ったころ

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《努力のかいあって、女優業はどんどん軌道に乗る。昭和55年、ドラマ「手ごろな女」(日本テレビ)で悲願であった初主演をかなえた。演じる主人公は、夫の稼ぎが十分ではないため、自分も焼き肉屋で働く女性。夫が外に女を作り、子供までできても、夫を愛するがゆえに相手の女の面倒まで見てしまう、ドジだが優しい気持ちの持ち主という役だ》


「手ごろな女」の主役をつかんだきっかけは、私が(日本テレビのスタジオがある)川崎市多摩区の店でラーメンを食べていたら、(親交が深い俳優の)西田敏行君が、演出の石橋冠(かん)さんとやってきたことです。西田君に「やあ」なんて挨拶したら、石橋さんが「あのスッピンでラーメンすすっている女は誰なの? 良い食べ方をしている」と、気に入ってくれました。


《脚本はジェームス三木さん。1話につき70ページほどの台本で、そのうち自身のセリフがないのはたった3、4ページという、正真正銘の主人公だった》


でも、泉ピン子の名前の下に自分の名前が入るのは嫌だと、当初予定していた共演者には、全員断られたらしいです。役者のプライドですね、芸人上がりの下にはつきたくないという。表面上は「ピン子さん、ウィークエンダー面白いですね、活躍なさっていますね」なんて言いながら、私が役者として活躍するのは嫌だったのでしょうね。そんなものだとは思います。

そういう状況のなか、(〝小さいお母さん〟と慕っていた女優の)森光子さんが、ノーギャラで私の義母役として出演してくれました。(〝大きいお母さん〟と慕っていた女優の)杉村春子先生は旅行中でしたが、代わりに(ピン子さんと同年代で女優の)太地喜和子(たいち・きわこ)さんを派遣してくれました。とてもうれしかったです。

当時のインタビューでは、「鼻が高くて、目が大きいきれいな人だけが主役じゃない。たとえブスでもブスなりに恋をして、傷つき、昼メロのヒロインと同じ気持ちを味わうこともあるんだってことを十分に出したい」なんて答えていますね。

ドラマの制作発表が9月11日に行われて、この日は私の誕生日でした。一度、金屛風(びょうぶ)の前で記者会見をしてみたかったので、その願いも一緒にかなえてしまいました。会見用に購入した分割払いで37万円の淡いグリーンのスーツを着込んで、精いっぱいのおしゃれをしました。

初めての主役が本当にうれしかった。死ぬほど忙しい時期でしたが、「体を作らなければならない」と思い立ち、何を思ったか毎晩、夜中3時ごろにマラソンしていました。今考えると、意味不明な女です。


《当時の新聞や雑誌には、「酒を断ち、たばこをやめて挑んだ主役」とあるが、これには理由がある》


実は撮影直前に肺に影が見つかりました。マラソンを続けていたら、変な微熱が出たので、病院に行って調べてもらったのです。結核の疑いがあるので、すぐに入院しなければならないとのことでした。

でも、父には「初めての主役だ、これを逃したら一生主演はできないぞ。だからお前は死ね。骨は拾ってやるから」と言われました。そこでプロデューサーや演出家に相談して、誰とも接しないように、出入り口付近に専用の部屋を作ってもらって、毎日病院に通って注射を打って撮影を続けました。父は「それで死んでも本望だろう」なんて言っていました。ほら、「孫の顔より、君が売れた姿が見たい」という人ですから。


《その父に従い、役に打ち込んだ。3カ月後、肺の影は消えていたという》


初めての主役でしたから、放送の時に「停電になりませんように、電波が止まりませんように」なんて、とても心配しました。心配のかいあってか、視聴率は良かったです。その成功で、主演ドラマ「花咲け花子」(日本テレビ系)などへと、つながっていきます。(聞き手 三宅令)

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