法廷から

転倒後、寝たわけではなかった…酒席で起きたバンドマンの悲劇

産経ニュース
傷害致死事件があった現場付近の路上=7月24日、東京都新宿区(松崎翼撮影)
傷害致死事件があった現場付近の路上=7月24日、東京都新宿区(松崎翼撮影)

東京都新宿区の路上で昨年夏、ロックバンドのメンバーだった男性がバンド仲間の男に転倒させられて頭を打ち、死亡する事件が起きた。酒席でのいざこざが原因だったが、男や他のメンバーらはすぐに救急車を呼ばず、男性が病院搬送されたのは半日後。男は傷害致死罪に問われ、東京地裁で7月、実刑判決が言い渡された。悲劇を招いたのは頭部負傷による昏倒(こんとう)と泥酔を取り違えた、判断の甘さだった。

いびき、嘔吐も…

「お前ら、全然飲んでないじゃん!」

昨年8月14日午前5時半過ぎ。ビジュアル系バンドのギタリストだった男性=当時(30)=は、アルバイト帰りにバンドメンバーらと新宿・歌舞伎町で4人で飲食していた。杯を重ね、酔いの回った男性は徐々に不機嫌になり、こう言って机を蹴り、店を出た。

「今のはないだろ」。同席していたメンバーの一人でボーカルを務める男(25)は腹を立て、男性を追いかけると背後から体を両手でつかみ、足をかけた。男性は転倒し、受け身をとれずに頭をアスファルトに強打。心配して店を出た他のメンバーらがその場で介抱したが、男性は嘔吐(おうと)し、いびきをかいていた。

酒が飲めない体質で、しらふだったボーカルの男は、男性が頭を打ったことをメンバーらに伝えたが「たんこぶだけだし、酔って寝ているだけだろう」と判断。タクシーで友人宅に男性を運び、寝かせた。夕方になっても目を覚まさないため、119番通報したが、男性は急性硬膜外血腫で死亡。ボーカルの男は傷害致死罪で起訴された。

判断の甘さ

公判では、被害者と被告らが夢に向かって音楽に打ち込んでいた様子が明かされた。

バンドは令和2年春ごろに結成。「日本武道館のような大きなステージに立つ」とメジャーデビューを目指し、アルバイトで生計を立てながら活動していた。亡くなった男性は10年以上、音楽活動を続けており「このバンドに全てをかける」と、周囲に打ち明けていたという。

メンバー同士で毎週のように遊ぶほど、仲もよかった。被告は男性について「本当に優しくて、大切な人だった」と話す一方、「酔うとメンバーや他のバンドにしつこくからんだりした」と、酒癖の悪さを懸念していたとも述べた。

公判では、死因となった頭部の傷が、被告に転倒させられた際にできたものかが争点となった。

男性は、メンバーから介抱されている際にも頭を打っており、弁護側はこの傷が致命傷になった可能性もあるため傷害罪に止まると主張。ただ被告は「自分が命を奪った」と繰り返し、自身の行為や救急搬送の判断を誤ったことへの悔恨を口にした。現場にいたメンバーらも証人として出廷し「ちゃんと判断できていれば」「後悔している」などと肩を震わせた。

7月15日の判決公判で言い渡されたのは、懲役4年(求刑懲役7年)の実刑判決だった。「口頭で注意すれば足りる程度で、追いかけて危険な暴行に及ぶ必要はなかった」。裁判長は、被害者の態度に被告が怒りを覚えたことについてこう指摘。「適切な医療措置を講じなかったこともあり、取り返しのつかない結果が生じた」と断じた。

いびきは危険なサイン

男性は早急に搬送されていれば一命をとりとめた可能性もあったが、被告らは目立った出血がなかったことなどから「予兆」を見逃していた。頭部外傷後のいびきは危険な状態を示すサインとされ、専門家は「軽く考えず受診・搬送を」と呼びかける。

頭部外傷に詳しい東海大学医学部付属病院(神奈川県伊勢原市)脳神経外科の本多ゆみえ医師によると、飲酒していた人が頭を打って意識がない場合、周囲が「寝ているだけ」などと勘違いし、119番通報が遅れるケースは少なくないという。

検査せず、見た目で判断することは医師でも難しい。頭を打った後のいびきのほか、嘔吐やけいれんも危険なサインで、受傷から2時間以内に病院で受診することが望ましいという。

救急車の到着までにできることはあるのか。本多氏は「仰向けでいびきをかいていると吐物がたまり窒息する可能性があり、体ごと横向きにすれば空気の通り道ができる。顔を少し横にするだけでも効果がある」とする。ただ「首の骨が折れている場合は体を無理に動かすと息が止まるなど逆効果になる可能性もあり、注意が必要」という。(松崎翼)

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