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悩ましい読書感想文 好奇心を刺激する9冊

産経ニュース
(左から)藤井一至著『土 地球最後のナゾ 100億人を養う土壌を求めて』(光文社新書)、斎藤隆介作、滝平二郎絵『モチモチの木』(岩崎書店)、五味太郎作『正しい暮し方読本』(福音館の単行本)
(左から)藤井一至著『土 地球最後のナゾ 100億人を養う土壌を求めて』(光文社新書)、斎藤隆介作、滝平二郎絵『モチモチの木』(岩崎書店)、五味太郎作『正しい暮し方読本』(福音館の単行本)

夏休みの宿題の中でも多くの子供を悩ませる「読書感想文」。少しでもポジティブに取り組めるように、今年も書店員さんに「これなら面白いと思えるはず」というものを選んでいただきました。まじめな子から好奇心旺盛な子まで、さまざまな個性に合う本をご紹介します。(司会は文化部・田中佐和)

田中 私は読書感想文が心底苦痛でしたが、皆さんはいかがですか。

百々典孝(紀伊国屋書店梅田本店) どっちかというと好きでしたね。

佐々木梓(ジュンク堂書店大阪本店)&田中 えー! 珍しい!

中川和彦(スタンダードブックストア) 僕はそもそも感想文を書くために本を読ませるのも、それに順番や点数を付けるのもおかしいと思ってる。

田中 中川さんがお怒りですが…まずは佐々木さんからお願いします。

佐々木梓さん(ジュンク堂書店大阪本店)選

・藤井一至著『土 地球最後のナゾ 100億人を養う土壌を求めて』(光文社新書)

・久野愛著『視覚化する味覚 食を彩る資本主義』(岩波新書)

・伊藤亜紗著『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(光文社新書)

佐々木 自分の生活にリアルにかかわる問題なら考えやすいと思って、そういうテーマが多い新書の中から、『土 地球最後のナゾ 100億人を養う土壌を求めて』です。

藤井一至著『土 地球最後のナゾ 100億人を養う土壌を求めて』(光文社新書)

佐々木 土は地球上に12種類しかないらしいんですが、筆者は今後やってくる食糧難の時代に備えるため、今よりもっと農作物ができる可能性のある土を探して世界中の土を掘り返している、というノンフィクション的な内容です。米国はこういう土だから小麦の輸出量が多いとか、永久凍土の土地の食べ物とかも書かれていて、考えるきっかけになると思います。

田中 文系でも理系でも興味が持てそうです。

佐々木 2冊目『視覚化する味覚 食を彩る資本主義』も食に関する一冊。食べ物の見た目や色に注目して、学校では習わない、企業の暗部も含めた食の歴史をたどる本です。

田中 文豪の小説ばかり選んで執筆に苦しんでいた昔の自分に教えたい…。

佐々木 小説以外の選択肢もあるとお伝えしたくて。これらは中学生向けですが、岩波ジュニア新書とかもう少し読みやすいシリーズもあるので、年齢に合わせて新書コーナーを探してみるのもお薦めです。

百々典孝さん(紀伊国屋書店梅田本店)選

・斎藤隆介作、滝平二郎絵『モチモチの木』(岩崎書店)

・アーネスト・トムソン・シートン著、阿部知二訳、清水勝絵『シートン動物記1』(講談社青い鳥文庫)

・アンリ・ファーブル著、中村浩、江口清訳『ファーブルの昆虫記』(講談社青い鳥文庫)

百々 僕は3冊とも小学校低学年向けで、まずは『モチモチの木』。

斎藤隆介作、滝平二郎絵『モチモチの木』(岩崎書店)

佐々木&田中 懐かしい!

百々 小学生の時のバイブルでした。猟師のおじいちゃんと2人暮らしの豆太は怖がりで夜に1人でトイレにもいけないんだけど、おじいちゃんの危機に勇気を振り絞る。僕が子供の頃は「男の子は勇気がないとだめだ」とか「男の子プレッシャー」があって。それをちょっとでも克服できれば、という本です。

中川 絵が印象的やなぁ。

百々 そうですよね。子供たちはこの絵本が描く昔の貧しい暮らしを想像する機会はあまりないだろうし、日本の歴史も知れる。「僕も勇気を」とかで締めくくれますしね。

中川 書き方まで教えてる(笑)。

百々 あとは僕が実際に読書感想文を書いた大好きな本で『シートン動物記』と『ファーブルの昆虫記』。シートンは残虐なイメージのあるオオカミが本当はいかに愛情深い動物かとか、動物にも感情があることや自然の偉大さを教えてくれる。動物の側に立って擬人化した書き方ですが、ファーブルは徹底した観察記録。小さな虫たちのすごい戦略を見ていると、自分がしょうもなく感じますね。

田中 最後は中川さんに締めていただきます。

中川和彦さん(スタンダードブックストア)選

・五味太郎作『正しい暮し方読本』(福音館の単行本)

・五味太郎著『大人問題』(講談社文庫)

・ロバート・ルイス・スティーブンスン著、ターシャ・テューダー絵、ないとうりえこ訳『子どもの詩の園』(KADOKAWA)

中川 五味太郎作『正しい暮し方読本』は小学生向けです。例えば「正しい買い物のしかた」は消しゴムはあるからいらない、かわいい便箋は子供っぽいからいらない、と全部否定しておいて「いらない理由が思いつかないもの」が買うべき品物だといっている。箸の持ち方とかテレビの見方とか、万事こんな感じ。

五味太郎作『正しい暮し方読本』(福音館の単行本)

田中 タイトルをみたら倫理的で道徳的な本かと思いましたが。

中川 真逆ですね。でもいっていることは正しいと思う。「正しい本の読み方」もあるよ。ほら、本はがんばって無理して読むものではないと書いてあるわ。2冊目はまた五味太郎で中学生向けに『大人問題』。いかに大人がくだらないことを言っているかが延々書いてある。

田中 先生への挑戦状的な感じ。それで感想文を書こうという子は面白い感性の持ち主でしょうね。

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