年500校が消える 求められる廃校活用の知恵

産経ニュース
令和3年3月で廃校となった大阪市生野区の市立御幸森小学校(株式会社RETOWN提供)
令和3年3月で廃校となった大阪市生野区の市立御幸森小学校(株式会社RETOWN提供)

少子化や過疎化により、全国の公立小中高校など400~500校が毎年、新たに廃校になっている。公立学校は地域コミュニティーの中心で、災害時には避難所にもなる重要施設。そんな廃校の活用法に全国の自治体が頭を悩ませる中、大阪市生野区では、旧小学校の避難所としての機能を残しつつ、交流の拠点とするプロジェクトが進んでいる。多世代、多国籍の住民の笑い声が響く、そんな未来が期待されている。

その名は「いくのパーク」

キムチ専門店や韓国料理の食材を扱うスーパーマーケットなど約150店が立ち並び、多くの観光客でにぎわう大阪市生野区のコリアタウン。今秋、この地域の新しい拠点として生まれ変わるのは、昨年3月に約100年の歴史に幕を下ろした市立御幸森(みゆきもり)小学校だ。

生野区では少子化に伴い、大規模な学校再編が進められてきた。西部に12校あった小学校は、統廃合によって平成28年から今年にかけて7校に。そこで課題となったのが、使われなくなった廃校の活用だった。

御幸森小につくられる新拠点の名前は「いくのパーク」。教室は飲食店やダンススクールのレッスン場に。図書室はそのまま、子供たちが放課後に集える図書館になる。校庭には野菜作りを体験できる農園を設置し、芝生スペースは休憩場所として開放する。

5人に1人が外国籍、多文化共生の拠点に

新拠点の企画と運営を手掛けるのは、まちづくり事業などを展開する株式会社「RETOWN(リタウン)」と、生野区で外国人のサポートなどを行ってきたNPO法人「IKUNO・多文化ふらっと」の共同事業体だ。大阪市の公募型プロポーザルで昨年10月に決定し、準備を進めてきた。

学校は災害時には避難所として使われる防災拠点でもあり、地域住民が交流するコミュニティーの場でもある。地域の住民からはそうした拠点が失われることへの不安の声があがっていた。さらに同区民は5人に1人が外国籍で、出身国は50カ国以上にのぼり、それぞれがお互いの文化を理解し助け合う、そんな街づくりが課題となっていた。

廃校となった大阪市生野区の市立御幸森小学校は、多文化共生の拠点として再出発する(株式会社RETOWN提供)

RETOWNなどが御幸森小で目指すのは、多文化共生の拠点だ。飲食店などで外国人らの雇用促進を目指し、孤立しがちな外国人の相談に乗ったり、国籍を超えて住民らが交流したりできる多文化共生センターを設置する。多世代が交流できるイベントも開き、子育て支援にもつなげる。

また、災害時には避難所として使うため、体育館や一部の教室の鍵は区役所や地元住民と共有。RETOWNの担当者は「学校という場所をにぎわいが生まれる拠点としてアップデートさせ、誰もが暮らしやすいグローバルタウンの拠点にしたい」と話す。

水族館や診療所、高齢者福祉施設も

全国で廃校は増え続けている。文部科学省によると、調査を始めた平成14年以降、令和3年5月1日時点までに廃校となった公立学校は8580校。このうち7398校では校舎がそのまま残っており、5481校が活用されている一方で、1917校は未活用のままだ。

国は平成22年、さまざまな情報を集約して廃校活用を促進する「みんなの廃校プロジェクト」を立ち上げた。各地の廃校の活用事例を紹介したり、廃校の活用を検討する企業や団体を自治体とマッチングするイベントを設けている。

廃校の活用方法は地域によってさまざまだ。高知県室戸市では小学校を改修して「むろと廃校水族館」に。愛知県新城市では小学校の一室を地元のジビエ料理などを提供するレストランに作り替えた。千葉県南房総市では、少子化や過疎化が進む地域で高齢者をサポートしようと診療所やリハビリステーションとして活用。高齢者福祉施設や企業の事務所として使うケースもある。

廃校を取り壊すにも、維持するにも自治体の経済負担は重く、統廃合が決まれば早急に活用方法を探る必要がある。民間事業者による活用が決まれば、自治体は校舎などの売却益を得られるほか、維持管理費用が削減できるメリットがある。

ただ、経済的なメリットだけでは決められない面もある。都市計画に詳しい近畿大の久隆浩(ひさ・たかひろ)教授は「学校に対する住民や卒業生の思いは強い。通常の民間施設とは異なる」と話す。

久教授によると、地域住民の協力の下で土地を確保したり建設にこぎつけたりした学校も多く、廃校をどのように活用するかをめぐって行政側と住民で意見が対立し、折り合いをつけるのが難しいケースがあるという。久教授は「公共施設である学校を、どのように使っていくかは全国の課題だ。公共性とまちづくりの観点から、慎重に検討していく必要がある」と話している。(北野裕子)

  1. 値上げしてもよいと思うもの 3位「おむつ」、2位「ビール」、圧倒的1位は?

  2. 安倍元首相銃撃事件で注目「旧統一教会」桜田淳子の現在地 34歳で合同結婚式に出席、テレビや舞台から去り…女優の道は閉ざされた

  3. 8日スタートNHK朝ドラ「ちむどんどん」第18週あらすじ 良子(川口春奈)は重子(鈴木保奈美)に直談判しに行くが…

  4. 内田理央のおっぱい写真にファン大興奮「一瞬ビビった」「萌え死んだ」

  5. 市から突然1300万円請求…なぜ? 年金生活の80代女性に 専門家「今後数年で同様の高額請求を受ける人は増える」