4日(日本時間5日)のアスレチックス戦で1試合2本塁打を放つなど、今や大リーグを代表するプレーヤーの一人となったエンゼルスの大谷翔平選手(28)。シーズン途中でのトレードについて複数の球団から打診はあったものの、結果的にトレードは成立せず、今シーズンの残留が決まった。ただ、来年オフにもフリーエージェント(FA)権を取得するだけに、今オフは大谷をめぐって移籍の動きが再燃するのは必至。識者からは「大谷との契約再延長の交渉が決裂すれば、来年の開幕前にもトレードがあるかもしれない」といった指摘も出ている。
見逃せぬ「商業的価値」
今季のトレード期限を迎えた2日、他球団とのトレードが成立せずにチームの残留が決まった大谷の去就を受け、米メディアでも大きく取り上げられた。
ニューヨーク・ポスト(電子版)はトラウト、レンドンの主力2選手が故障で戦列を離れていることを残留の背景に挙げ、「大谷のトレードはチャンスがなかった。エンゼルスのオーナーであるアート・モレノは(他球団からの)オファーを聞きたくなかったので、交渉はほとんど軌道に乗らなかった」と舞台裏を明かした。
主力選手を故障で欠く中、チームの大事な戦力として大谷を手放せない側面がある一方、大リーグ評論家の福島良一氏は「大谷は戦力としてエンゼルスに必要だが、商業的な価値が大きいことも(残留の)要因の一つではないか」と分析する。
米経済誌フォーブス(電子版)は今年4月、大谷のグラウンド外での今季の収入を2千万ドル(約26億円)と試算。昨シーズンは投打の二刀流として活躍し最優秀選手(MVP)を獲得したことで日米の複数の企業と広告契約を結ぶなど、グラウンド外での収入は昨年の3倍以上にも増えた。
大谷の存在は球団にとっても観客動員やグッズ収入に加え、テレビへの放映権などマーケティングに及ぼす影響が大きいだけに、エンゼルスにとって簡単に手放せない選手の1人となっている。
エンゼルスの厳しい財政運営
残留が決まった大谷だが、今オフにはトレードの動きが再燃しそうな状況だ。
エンゼルスは、トラウトと2019年に12年総額4億2650万ドル(当時の為替レートで約470億円)、レンドンとも同年に7年総額2億4500万ドル(同約270億円)の大型契約を締結。大谷との再契約にも多額の資金が必要とされる中にあって、球団の財政運営はかなり厳しい。
また、チームはア・リーグ西地区で4位(4日時点)と低迷しており、プレーオフ進出は厳しい状況。チームの抜本的な立て直しが迫られており、大谷とのトレードを通じて複数の若手有望選手を他球団から獲得することも考えられる。
福島氏は「大谷とエンゼルスとの契約交渉が決裂すれば、来季の開幕前にトレードの動きがあるかもしれない」と話している。(浅野英介)