「情報共有は医療技術の一つ」 現役救急医が開発 新型コロナ患者の入院調整を支援

自然災害や新型コロナウイルスの感染急拡大など、救急対応の必要性が急増している医療現場。そんな緊急時の医療体制をデジタルの力で効率化しようと現役の救急医が開発した情報共有システムが、災害拠点病院などで導入されている。千葉大学発ベンチャー「Smart119」(千葉市)が考案した「respon:sum」(レスポンサム)だ。端末上の簡単な操作で、災害時のスタッフの安否確認や集合状況の確認、対応部署の人員配置など、全体の動きをリアルタイムで「見える化」することで、初動体制の迅速な構築を支援する。昨年新型コロナに感染した妊婦の搬送手配が難航し、新生児が死亡する事案が起きた千葉県では、この技術を新型コロナ患者の入院調整ツールとして採用し、痛ましい事案の再発防止に役立てている。

救急対応の必要性が急増している医療現場(Getty Images)※画像はイメージです
救急対応の必要性が急増している医療現場(Getty Images)※画像はイメージです


情報共有は救急医療の“要”

「驚かれるかもしれませんが、病院の連絡手段は想像以上にアナログ。いまも多くの病院が緊急時に電話連絡網などのアナログな方法やメールの一斉送信を使っていると思います」─。こう話すのは、千葉大学大学院医学研究院救急集中治療医学教授で現役救急医の中田孝明さん。さまざまな情報ツールが発達している時代ではあるが、日々の診療業務に追われる現場で働く医療従事者が、緊急時の連絡手段の見直しにまで考えが及ぶかというと「難しいのが現状」という。

中田孝明(なかた・たかあき)。Smart119代表取締役。千葉大学大学院医学研究院救急集中治療医学教授(Smart119提供)

しかし非常事態を想定すれば情報共有体制の弱さという問題は見過ごせない。中田さんによると、災害などの緊急時に行う安否確認や集合要請に電話やメールを使用していたころ、病院内で行った災害訓練は「端的にいって大混乱だった」という。

災害対策本部には集まった医療スタッフが列をなし、駆けつけた順に決まっていく配置先の情報の共有を担うのは手書きのホワイトボードだった。「全体のマンパワーが把握できないなかで対策本部の担当者が手探りで人員を配置している状況。現実に災害が起きた場合、一刻を争う現場ですぐに病院の機能が回らなくなることが想定された」という。

それは災害医療のエキスパートが集まる現場でも同様で、「処置ができていようがいまいが、情報が共有されていなければ途端に現場がひっくり返るような事態になっていた」という。そんな状況を目の当たりにし、「救急医療において情報の共有は重要な医療技術の一つ」であることを痛感した。

自動集計で初動体制を構築するシステムを開発

災害発生直後の初動体制を秩序だって整備する情報ツールを目指し、中田さん自らが立ち上げた大学発のベンチャーで開発したのが医療事業継続支援システム「respon:sum」(レスポンサム)だ。

スタッフの安否確認・集合要請への返信をスマートフォンなどの端末で⾏う仕組みは、一般企業にも導入されている安否確認のシステムに似ているが、その最大の特徴は情報収集の速さと自動集計機能にある。

「レスポンサム」で招集通知を受けた職員側のスマートフォンの画面。病院到着までの所要時間が表示されたボタンを1クリックするだけで、管理者側へ安否確認・招集に対する返事が可能。職員の新型コロナウイルス陽性者情報、健康情報も⼀元管理できるため、関係期間への報告や汚染エリアの消毒や濃厚接触者の特定などの対策も取りやすい(Smart119提供)

実際に使用する場面を想定すると、災害発生直後、対策本部は全職員の安否確認と集合要請を⼀⻫に通知し、それに対し職員は簡単な操作で要請に応じることができるかどうかと病院への到着時間を回答。その回答をもとにシステムが職員の参集状況を⾃動集計し、最適な災害対応部署に配置する。当初想定した到着時間より遅れる場合は再度時間を伝え直すと、その情報がリアルタイムで更新され、配置図が修正される。中田さんによると、個々の応答(response)を集めて要約(summary)する機能を掛け合わせた造語が「レスポンサム」の由来だという。

さらに災害・救急医療の現場でできるだけ作業負担を減らすため、IDやパスワードを入れなくても1クリックで本人確認ができる特許技術も開発した。「パスワード等があると、忘れてしまったり、いざというときに連絡がつかないことも想定されます。忙しくても確実に返答ができて、リアルタイムに修正が効く。災害時に本当に必要な機能と使いやすさにこだわりました」─。

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