計算問題などの頭を使う活動と、歩行などの身体運動を同時に行う二重課題運動が85歳以上の「超高齢者」の身体機能と認知機能に良い影響をもたらす。こんな高齢化社会・日本の課題解決に向けたひとつのヒントが筑波大学とスポーツクラブや介護施設などを展開するルネサンスの共同研究で明らかになった。
筑波大学テーラーメイドQOLプログラム開発研究センターの尹之恩(ゆん・じうん)研究員とルネサンスの上田哲也氏が6月に発表した論文によると、研究チームは老人ホームで暮らす平均年齢89.9歳(85~97歳)の超高齢者24人を対象に調査を実施。1回あたり60分の二重課題運動を週に2回行う12人と、行わない12人にグループを分けた。二重課題運動をゲーム感覚でできるように、じゃんけんやボール回しなどの身体運動と、数字の計算や言葉を使う脳活性課題を組み合わせて同時に行い、週を重ねるごとに課題の難易度が高くなるようにした。
24週間の調査を終えた後、両方のグループに認知症の診断テスト「ミニメンタルステート検査(MMSE)」と、認知機能と関連がある6つの身体機能検査を受けてもらったところ、二重課題運動をしたグループは調査の前後で認知機能の改善が確認された。また6つの身体機能検査のうち短い棒を指で持ち上げて移動させるテストと、目を開けたまま片足で立つテストで、二重課題運動グループの成績は二重課題運動を行わなかったグループと比べて有意に高かった。一方で二重課題運動を行わなかったグループは認知機能と身体機能の両方が調査後に低下していた。
尹氏らは論文で「本研究で用いたような楽しくこなせる二重課題運動を継続的に実施すれば、身体や認知機能が維持・改善され、認知症を発症せずに健康寿命を延ばすことができると考えられます。今後、身体と認知機能を同時に活性化させるための、より高度なプログラムの開発に取り組みます」としている。