【ニューヨーク=岡田美月、平田雄介】核軍縮と不拡散、原子力の平和利用を議論する核拡散防止条約(NPT)再検討会議が1日(日本時間同日深夜)、米ニューヨークの国連本部で開幕した。日本の首相として初めて出席した岸田文雄首相は演説を行い、「核兵器のない世界」に向けて、核戦力の透明性向上などを盛り込んだ行動計画「ヒロシマ・アクション・プラン」を発表した。
再検討会議はNPTの運用状況を点検するため5年ごとに開かれる。本来、2020年に開催予定だったが、新型コロナウイルス禍の影響で4度延期され、7年ぶりの開催となった。ロシアのウクライナ侵攻で軍縮の機運がしぼむ中、最終日の26日に最終文書を採択できるかが注目される。
首相は演説で、NPTを「軍縮・不拡散体制の礎石」と位置付け、体制の維持・強化を呼びかけた。その上で、第一の行動計画として、国際社会が核兵器不使用の継続の重要性を共有すべきだと訴えた。
核兵器保有国に対しては、濃縮ウランやプルトニウムなど核分裂性物質の生産状況に関する情報開示を求め、核戦力の透明性向上を呼びかけた。核弾頭保有数を公表せず、不透明な核管理体制が批判される中国が念頭にある。
新たな核実験が取り沙汰される北朝鮮については、国際社会と連携して核・ミサイル問題に取り組むとともに、イランの核合意順守に向けた取り組みにも貢献する姿勢を示した。世界の核兵器の減少傾向を維持する重要性を訴え、核軍縮、軍備管理に関する米露、米中の対話も後押しした。
首相はまた、世界の若者を日本に招いて被爆の実相に触れてもらうため、国連に1千万ドルを拠出して「ユース非核リーダー基金」を創設。核軍縮に向けた国際的な機運を高めるため、「国際賢人会議」の初会合を11月23日に広島で開くことも表明した。
首相は滞在中、再検討会議のほか、日本を含む非核保有12カ国でつくる「軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)」外相会合に出席。国連のグテレス事務総長とも会談し、今月2日夜に帰国する。