(セ・リーグ、阪神6-0ヤクルト、14回戦、ヤクルト8勝6敗、29日、甲子園)ピンチを切り抜けるたび、グラブをパンパンとたたいて喜びを表現した。後半戦の〝開幕投手〟を務めた阪神・西勇が燕打線をピシャリと封じ、お立ち台で気持ちよさそうに汗を拭った。
「チームが勝ったことが大きい。気負い過ぎてもよくないのは分かっているので普通通りにいくことでベストなピッチングができるかなと思っていた。自分の投球ができたと思う」
逆転Vを目指す〝第2の船出〟で迎えるは首位ヤクルト。重要な一戦であることが分かっているからこそ、右腕もあえていつも通りのプレーを心がけた。山場は3―0の四回だ。安打と一塁手・ロドリゲスの失策で1死一、二塁とされたが、涼しい顔は崩さなかった。サンタナを外角のフォークで見逃し三振、中村は遊ゴロに仕留め「うまくかわすことができた」と声を弾ませた。
7回4安打無失点で7勝目(6敗)を挙げ、防御率もリーグ2位を維持する2・05。安定感抜群の右腕を、矢野監督も「点が入ってからも丁寧に丁寧に投げてくれた」とねぎらった。
この日は「夏休みこどもまつり」として開催され、球場に訪れた子供たちにさまざまファンサービスが実施された。西勇も小さい頃はナゴヤドームに足を運び、中日・福留のホームランや川上憲伸の投球に魅せられ、プロを志した。そんな少年時代を思い出しながら、大勢のファンの前で好投。きっとその雄姿は小さな虎党の目にも焼き付いたに違いない。
「僕ら(投手)だったら完封、完投というのは(小さい頃から)ずっとカッコイイと思っていた。分業制でなかなかできないけど、しっかり自分の役割を果たすことをやり続けていけばいい」
背番号「16」のマウンドでの頑張りがチームにも子供たちにも勇気と活力を与えてくれるはずだ。(織原祥平)