「高校4年生」のいま 大学全入時代で補習科の岐路

産経ニュース
松江北高校の補習科生が学ぶ百周年記念会館「起雲館」。同校の敷地内に建てられている=松江市
松江北高校の補習科生が学ぶ百周年記念会館「起雲館」。同校の敷地内に建てられている=松江市

大学進学を目指す浪人中の卒業生らの受験勉強を指導する、「補習科」と呼ばれる教育機関が島根県の5つの県立高校に付設されている。都市部から離れ、予備校などが少ない受験環境を支えようと、PTAが運営する形で昭和40年代から開設されている。しかし、大学の増加と少子化の影響で「大学全入時代」が近づき、在籍者が減少傾向にある。「高校4年生」とも呼ばれた補習科の現状を追った。

経済・精神面も安心

補習科とは現在、島根県や岡山県、香川県など西日本の地方の県に存在する、浪人生の教育を引き受ける機関だ。

島根県では、松江北▽松江南▽松江東▽出雲▽浜田-の5つの県立高校にあり、松江東高校以外の4校は昭和41年、東高は61年に開設された。大学進学率の上昇に合わせた措置だったとみられる。いずれも他校の卒業生も受け入れており、実質的に予備校に近い存在だ。

「志望大学に進学できなかった生徒が、都市部の予備校に行くと、下宿代など経済的な負担が増します。安心して受験勉強ができる場を設けようと、保護者が設置し、今でも続いているのです」

補習科のある高校の教員は補習科の設置理由をこう説明する。授業料も予備校に比べて安価だ。

この高校の補習科では、平日に1日6~7限の授業があり、基本的には国公立大を目指して5教科を教える。教壇に立つのは現役生と同じ教員に加え、非常勤などで対応する。

この教員は「家庭から通える補習科は、寮生活や1人暮らしを余儀なくされる都市部の予備校より精神面でも安定するメリットもあります」という。

生徒は高校時代と同じ制服で登校する。「4年間同じ制服で同じ高校に通うのは、つらいとも思うが、補習科での経験が、後の心の糧になってほしい」と願っている。

在籍者は減少傾向

少子化と大学数の増加に伴い、来年にも大学進学希望者を入学定員総数が上回る「大学全入時代」を迎えようとしている。

浪人数も減少傾向にあり、島根県の5つの補習科でも、今年度の在籍者数は松江北28人▽松江南12人▽松江東6人▽出雲57人▽浜田11人-で、過去最少となった高校もある。

平成5年度のピーク時には79人が在籍したという浜田高校の補習科担当教員は「11人は過去最少。存続に危機感を覚えている」と話す。

県西部で唯一補習科のある同校だが、「松江などは、まだ予備校の選択肢があるが、県西部にはほとんどない。浪人してでも進学を目指そうとする子供の受け皿をなくしてはいけない」という。

同校では国公立大学への進学に縛られず、私立大学受験対策なども柔軟に行い、補習科生のニーズに応えるよう変化している。

ただ、57人が在籍する出雲高校の補習科は、過去25年間で最少は平成19年度の39人。最多は15年度の77人。各年度の合否結果によって人数は変化しており、ニーズはなくなっていないようだ。

「親切の制度化」

補習科に関する論文を執筆した島根大職員の北川翼さん(29)と、島根大教育学部の諸岡了介教授(46)は「補習科は受験インフラ面で弱いところがある地方を助ける機関で、親切が制度化されたものではないか」と説明する。

補習科は、全国的には知名度がないものの、よく聞く比喩として「高校4年生」として島根や岡山では知られている。一方、学校教育法上には補習科に関する規定はなく、島根県教育委員会も「運営には関与していない」とする。

諸岡教授は「地方の受験格差が放置されている。補習科をどうすべきかは、国が考える問題だ」と指摘。北川さんは「進学をしたい人を支える機関としてあるのが大切だ」といい、「地域に根付いた文化のひとつ」とその存在を評価する。

補習科に関する論文を書いた島根大職員の北川翼さん=松江市

実際、各地の補習科で学び、志望大学に進んだ著名人も多い。国民民主党の玉木雄一郎代表も高松高校(香川県)の補習科から東京大学に入学したという。

出雲高校の補習科で一浪し、志望大学に進んだ40代の女性は「浪人しても、親に金銭的負担を掛けたくなかったし、現役時代から知っていた先生に授業を教わるのも心安かった」と振り返る。

その上で、「地方では女子を浪人させたくないという気風が残っていたが、補習科ならばと許された。今でも、そういった気風が残っているのなら、補習科は男女格差の解消にも必要なものだろう」と話した。(藤原由梨)

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