【ノーサイドの精神】
ラグビー日本代表は今夏のテストマッチ4連戦(すべて国内開催)を終えた。ウルグアイ代表に連勝、欧州王者のフランス代表に連敗だった。
SHは斎藤直人(24)=東京SG=が2試合先発。代表活動中、新型コロナ抗原検査の陽性反応による離脱を強いられた。それでも再合流し、最終戦となった今月9日のフランス戦ではテンポのいい球さばきで攻撃を活性化させ、格上を15-20と追い詰めた。2019年W杯日本大会で正SHだった流大(ながれ・ゆたか)がコンディション不良で不在の中、存在感を示した。
『何かに挑戦したら確実に報われるのであれば、誰でも必ず挑戦するだろう。報われないかもしれないところで、同じ情熱、気力、モチベーションをもって継続しているのは非常に大変なことであり、私は、それこそが才能だと思っている』(出典「知的生きかた文庫」の『迷いながら、強くなる』)
これは斎藤が数年前に知り、印象に残っているという将棋界のレジェンド、羽生(はぶ)善治九段の言葉だ。思い出すこともあるそうで、「何事も経験だと思う」。
昨年6月の全英・アイルランド代表ライオンズ戦で初キャップを獲得した斎藤は正SH奪取を狙う。「チームを引っ張る意識でトレーニングに取り組んでいる。9番(SH)は(チームを)前に出すことが求められている」と自覚を示す。1週間の予定をノートに書き出し、毎日振り返り、必要ならコメントを添えて文字として書き残す。日々の積み重ねで、自身を成長させている。
代表は9月上旬に50人強を招集して再開予定。4強入りを目指す来秋のW杯フランス大会を見据え、11月の欧州遠征などで強化を図る。SH斎藤の挑戦は続く。(石井文敏)