重松清氏のベストセラー小説「とんび」の映画に心を洗われ、公式サイトにある一文を読んだ。「父のめいっぱいの愛と、皆の暖かい手で、僕は大人になった」。昭和の時代、瀬戸内を舞台に、不器用な父が妻の死を乗り越え、人情に厚い町の人たちの手を借りて息子を育てる物語
▶これとは真逆の児童虐待が起き続けている。児童相談所(児相)の相談対応件数は右肩上がりで、令和2年度に初めて20万件を超えた。6月末、大阪府富田林市の自宅で2歳女児が熱中症死した事件では、保護者の祖母らが4日間で計57時間、女児の手足を縛って柵の中に閉じ込めていたという
▶こんな保護者に対し、子供の命を守るのは難しい。近所付き合いの希薄さが増している現代なら、なおさらだ。防波堤の一つが児相だが、相談件数の急増に児童福祉司ら専門家の増員が追い付いていない。散見される児相の誤った判断を改善するためにも、人員増は欠かせない。