多田氏は「(創始者の)文鮮明氏が、日本が植民地化していた韓国で、当時の警察から拷問を受けたという話も教えられた。『日本人は救世主(文氏)にもムチを打った罪を背負っている』という言い分だった」と振り返る。
母親の入信や献金で家庭が崩壊したことに恨みを持ち続けた山上容疑者だが、ツイッターや犯行直前にジャーナリストへ送ったとみられる手紙には「オレは努力した。母の為に」など家族への愛情をにじませる文面もあった。
これについて多田氏は「母親が入信したことで、自分自身もみじめで悲惨な目に遭っているという訴えや、家族への愛情を読み取ることができる」と語る。
多田氏が脱会できたのも、家族や親族のサポートがあったという。一方で「信者の家族は、愛情が強いほど宗教団体への憎悪が暴走してしまうことがある。憎悪が凶行へつながる前に、山上容疑者の考えを受け止め、軌道修正できる第三者がいればよかったのだが」と多田氏。
山上容疑者の凶行について多田氏は「最悪の形だが、1980年代に注目された霊感商法がいまだに存在することや、正体を隠し接触する勧誘の手口、政治家との関係、宗教2世問題などが明るみに出た。報復を恐れていた元信者らも声を上げやすくなった」とする一方、こう強調した。
「殺人事件に発展するまで問題が放置されてしまった。恨みは実力行使で晴らすべきではなく、こうなる前に問題が白日の下にさらされるべきだった」