近ごろ都に流行るもの

駆除した猪・鹿「ジビエレザー」に 革小物や服…なめし技術で命を再生

産経ニュース
獣皮を鮮やかなジビエレザーに再生する山口明宏さん。着用のブルゾンやバッグも=東京都墨田区の山口産業(重松明子撮影)
獣皮を鮮やかなジビエレザーに再生する山口明宏さん。着用のブルゾンやバッグも=東京都墨田区の山口産業(重松明子撮影)

年間161億円に達する農作物被害防止のために、駆除された野生のイノシシとシカは年間109万頭にも及ぶ(農林水産省)。ジビエ料理への食利用が知られているが、「ジビエレザー」というファッション活用も広がってきた。バラツキが大きな野生の個体処理は簡単ではないが、優れたなめし技術が活用を支えている。人間の都合でいただいた命を無駄なく使い切る。それは現代のSDGs(持続可能な開発目標)であり、昔から人々が抱いてきた動物への素朴な感謝の思いの具現でもある。

仏高級メゾン納入品と同手法

革のキメと風合いが美しいボストンバッグ。手触りは堅牢(けんろう)かつしなやかだ。「イノシシの革です。傷もあるけれど、それが個性だよね。とても丈夫」と、山口産業の山口明宏社長(55)。伊達な黒革のブルゾンはエゾシカ製だ。

東京都墨田区。荒川沿いの木下(きね)川地区は、戦前からタンナー(なめし業者)の集積地である。なかでも同社は、環境負荷が大きいクロムなめしを行わず、30年前に独自開発した植物性タンニンによる「ラセッテー製法」で高く評価されてきた。その豚革は、フランスの超高級メゾンのバッグ素材に使われるほどだ。ジビエも全く同じ技術でなめされ、工場には深みのある発色の赤やブルーの革が並んでいる。

平成20年。獣皮を資源活用することで各地の活性化につなげる「MATAGI(マタギ)プロジェクト」を始めた。皮の大きさに応じて1枚5500~7700円ほどの工賃でなめし、送り返す。現在までに550カ所以上から皮を引き受け、年間3千枚のジビエレザーを製作している。

きっかけは2人の男性のアポなし訪問だった。リュックからそれぞれエゾシカとイノシシの獣皮を取り出し、「レザーにしてもらえませんか」。ジビエの勉強会で上京していた北海道の猟友会関係者と島根県の町役場職員。駆除後の処理が地元の重荷になっているという。「これをよく飛行機に持ち込めたなという、毛の付いた皮。持ち帰らせるわけにいかないと預かった。なめしてみると、とてもきれいな革になった」

東京と地方で2拠点生活を送る俳優の松山ケンイチさんも、シカのなめしを依頼。本人のインスタグラムによると、ジビエレザーブランド「momiji(モミジ)」を立ち上げ販売準備を進めている。

だが、年々増え続ける駆除数に対して活用数は遠く追い付かない。山口社長は次の手として、革を持ち込む猟師や自治体側と革製品メーカーをつなげる「レザーサーカス」という仕組みを始動。レザースニーカーのスピングルムーヴ(広島県)、革手袋のスワニー(香川県)など、北のマタギと西の工場とのつながりが生まれた。

「捨てられる獣皮を減らすために必要なことは、ジビエレザーの安定供給とそれを使った製品への継続的な需要」。タンナー他社への技術提供、革製品業者との〝サーカス=輪〟の広がりに挑んでいる。

東京都中央区日本橋浜町のクロスディーズジャパンは、3D計測器による足形測定で、オーダーメードシューズを製作する。大物歌手から舞台用ハイヒールを受注するなど、履きやすさにこだわる工房でも、ジビエレザーが使われていた。

ジビエレザーの靴を作るクロスディーズジャパン。弾痕(手前)などを避けて裁断する=東京都中央区(重松明子撮影)

「エゾシカ革は牛革に比べても柔らかく軽量で、通気性や吸放湿性に優れている。快適なこの革で靴を作りたいと思った。足なじみがいいと好評です」と諏訪部梓社長(37)。「もともと、無駄になる靴を作りたくなくて始めたオーダーメード。獣皮を無駄なく生かす理念に共感しています」

独特のタイダイ染は野生獣の傷をカムフラージュする模様であり、「デザイン性という付加価値もついた」。ジビエレザー製は、パンプス7万7千円、紳士靴9万200円など。

猪鹿(いのしか)。花札にも描かれた縁起の良い動物が「害獣」と呼ばれるようになったが、「害」の源は開発で環境や生態系を乱している人間側だ。そこは心したい。(重松明子)

  1. NHK朝ドラあすの「舞いあがれ!」12月6日OA第47話あらすじ 柏木(目黒蓮)は中間審査に無事合格、着陸にてこずった舞(福原遥)は…

  2. 野菜のプロ直伝「おでんの大根 一瞬で味を染み込ませる方法」に「いいね」続々「これ本当に一撃で味が染みる!」

  3. 【虎のソナタ】思わぬ大物が阪神へ移籍してくるかも 12・9現役ドラフトは大注目

  4. 広瀬章人八段は4年ぶり竜王奪取ならず 藤井聡太竜王に敗れ「スコア以上に完敗だった」/将棋

  5. NHK大河「鎌倉殿の13人」12月4日OA第46話あらすじ 京で高まる鎌倉への不信感、北条家では泰時(坂口健太郎)が思い悩み…