電力需給の逼迫(ひっぱく)が予想される今冬に備え、岸田文雄首相が最大で9基の原発を稼働させる考えを示したことに関し、萩生田光一経済産業相は15日の閣議後記者会見で「工事や検査期間の見直しなどで稼働を確保する」と述べた。「最大限の供給力確保に向けて万全の取り組みを進めていく」と強調した。
ただ、9基はもともと稼働が想定されていた原発で、新規の再稼働は盛り込まれていない。立地も西日本に集中しており、日本全体でみれば需給逼迫の状況は大きく変わらない見通しだ。
関西電力は同日、定期検査で停止中の大飯原発4号機の運転を再開した。同機を含めても現在稼働中の原発は九州電力川内1号機など6基にとどまっており、計9基となれば供給力は大きく増加する。
ただ稼働を見込む9基はいずれも東京電力福島第1原発事故以降に原子力規制委員会の新規制基準の審査を通過し、一度は再稼働を果たしたことのある原発だ。各電力会社の計画でも冬に稼働することを見込んでいたもので、関西電力の高浜3号機と美浜3号機は今夏、高浜4号機は10月下旬に稼働する見通し。これに九州電力玄海3号機が来年1月に加わるが、玄海4号機が9月に定期検査で停止することから、冬の稼働は最大9基となる。
経産省の担当者によると、冬の需給見通しの試算でもこれら原発の稼働は既に織り込み済みだという。ただ「再稼働の前倒しで需給の数字は改善される可能性はある」と説明。電力会社の取り組みを後押ししたい考えだ。